2019年
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動物園などで高度医療 獣医師らがチーム 全国へ派遣 「どうぶつ医師団」創設

2019-10-16

 獣医師らによる動物園水族館動物医療チーム未来を創るどうぶつ医師団の創設を発表する関係者

 国内の中小規模の動物園、水族館では獣医師の不足、情報や技術の不足などを背景に、飼育動物の診療や治療に苦慮している現状がある。貴重な飼育動物に、より質の高い医療を提供するため、獣医師らによる動物園水族館動物医療チーム「未来を創るどうぶつ医師団」が10月4日に創設された。同医師団では、今後、要請のあった全国の動物園や水族館に医師を派遣し、治療を支援する他、大学や学術団体と連携して獣医師の人材育成を図っていく。盛岡市動物公園で15日、記者発表が行われ、創設の経緯や活動理念などが示された。

 国内に約80カ所ある動物園や水族館では、希少種を含め多種多様な動物が飼育されている。一方で、大学などでの教育カリキュラムは、犬や猫などの伴侶動物、牛や馬などの家畜が中心。各動物園や水族館の獣医師やスタッフは、飼育動物の健康管理や環境保全のために日々努力しているが、症例や治療例が少ないために、十分な質の医療を提供できない場合もある。

 こうした動物園や水族館の飼育動物に、伴侶動物並みの水準の高度医療を提供し、種を継続的に残していくため、同医師団では要請に基づき、全国の動物園や水族館へメンバーの医師を派遣して治療などを支援する。賛同を得られた動物園や水族館から症例や治療例の情報提供を受け、情報公開することで、医療の質を高める。

 本県では、2019年4月に岩手大農学部附属動物病院に、獣医大学では国内初となる動物園水族館動物診療科が開設され、希少種を含む飼育動物に対する医療を提供する人材育成が期待される。同医師団では、大学や学術団体と連携して、獣医師と学生が動物園や水族館で実際に治療の実践機会を経験することで、より高度な知識や技術を持つ人材を育成していく。

 同医師団の監事を務める盛岡市動物公園の獣医師、松原ゆきさんは「特殊な知識や技術があれば、救えた命はあったと思って診療に当たっている。ゾウやキリンなどの希少な動物を治療することは、すごく勇気がいる。麻酔を掛けただけで死んでしまったらどうしようという不安や自分の技術が通用するのかという不安と日々戦っている。勉強は毎日するが、やはり実践的なものをやったことがないので。医師団が形成され、チームで大事な動物を診ていけるので、そうした不安が解消されるし、活動が全国に広がり動物園の動物の福祉や医療のレベルが全体的に向上すれば」と現場で働く立場から医師団の創設の意義を語った。

 同医師団は、理事長を務める岩手大農学部共同獣医学科の福井大祐准教授をはじめ、市動物公園の辻本恒徳園長ら獣医師4人を含む約10人が現時点でメンバー。350万円を目標にクラウドファンディングを12月10日まで実施する他、協力を得られた動物園や水族館などに募金箱を設置して活動資金を募っていく。クラウドファンディングの募金はReadyfor(https://readyfor.jp/projects/doubutsuishidan)から。

 福井理事長は「今の動物園は野生個体を捕獲して飼育下に置いているのではなく、8、9割が動物園で生まれ、育った動物たち。私たちは全力を上げて、貴重な地球からの預かり物を健康管理して守り、持続可能なように後世へ残していかなければならない責任がある。その基盤となる健康管理、支える獣医力をいかに高めていくかが大事。私たちの団体が目指しているのは、未来の動物たちと子どもたちに何を残せるか。人と動物の共存をテーマに活動していきたい」と話した。



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