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- 新しい自分に出会える魅力 県立大3年の金野琴音さん 日本舞踊 昨年、藤間琴之翠を披露 母亜子さんと連獅子
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2023-01-03
稽古に励む藤間琴之翠さん(左)と師の藤間亜祁之さん
県立大社会福祉学部3年の金野琴音(ことね)さん(21)=盛岡市南仙北=は、母で藤間流舞踊教授の金野亜子(藤間亜祁之=あきの=)さん(52)の下で、日本舞踊の稽古を重ねる。昨年11月の第75回岩手芸術祭・日本舞踊公演で、名取の藤間琴之翠(きんすい)を披露する舞台に臨み、成長した姿を見せた。金野さんは「私たちの年代には日本舞踊は堅苦しいイメージもあるかもしれないが、見て面白い演目もたくさんある。まずは見て、楽しんでほしい」と願う。(藤澤則子)
県民会館大ホールで開かれた同日本舞踊公演の演目は、歌舞伎役者の親子共演でも知られる「連獅子」。藤間亜祁之さん、藤間琴之翠さんの母娘共演で、親子の情愛を描く作品に挑戦した。親獅子に谷に蹴り落とされても力を振り絞ってはい上がる子獅子の姿や、最大の見せ場である勇壮な「毛振り」で観客を魅了。大きな拍手を送られた。
上演後、「踊っている最中も、これまで支えてくれたいろんな人たちの顔が浮かんできた。頑張って練習してきた成果は出せた」と、充実感をにじませた金野さん。母の亜子さんも「(琴音さんの)祖母の代から3代で受け継いできた日本舞踊。幼い頃から多くの人に支えられて、いまがあり、感謝しかない」と感慨に浸った。
金野さんは、大船渡市から盛岡市に転居後に藤間秀之進さんに師事した祖母佐々木チヤ子さん(2018年に81歳で死去)、母の亜子さんの影響で、物心がつく頃には日舞が身近にあった。浴衣や着物への興味に始まり、おのずと母に踊りを教わるように。4~5歳ころに初めて白塗りして踊ったのが、京都の舞妓が習うことで知られる「祇園小唄」。間もなく盛岡芸術祭でも初舞台を踏んだ。
名取藤間琴之翠の披露となった第75回岩手芸術祭・日本舞踊公演での「連獅子」の一場面
昨年3月に名取藤間琴之翠を名乗ることが許され、4月の盛岡芸術祭の舞台後、本格的に「連獅子」の稽古に取り組んだ。大学がある平日は講義と施設への実習、土日は稽古と多忙な日々だったが、周囲の理解もあり、本番前の一定期間は稽古に集中できた。
「連獅子」の上演は、他の流派の師の指導や協力があり、実現した。亜子さんは「自分もまだまだ勉強中だが、(琴音さんら)若い世代につないでいく時期が来ている」と気を引き締める。「世の中がギスギスしていると言われるいまこそ、芸を通して心を磨くこと、相手への思いやりを大切にしてほしい」と期待を込める。
「日本舞踊は、現代の生活にはない動きがある。いろんな役柄があり、自分じゃない自分になれるのも面白い」と魅力を語る金野さん。卒業後は「人の役に立つ仕事をしたい」と言うが、「日本舞踊の経験からか、人の記憶に残る仕事をしたいという思いもある。踊りは一生続けていきたい」と笑みを広げた。
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