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- 「日本一からその先へ」 盛岡市出身の阿部泰洋さん(東京芸大大学院2年) 全日本学生音楽コン1位 8月に故郷でコンサート
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2023-01-10
「いまは毎日稽古で音楽にどっぷり。大変だけど、楽しい」と語る阿部泰洋さん
盛岡市出身で東京芸術大大学院2年の阿部泰洋さん(24)=不来方高、国立音楽大卒、さいたま市在住=は、2022年11月30日に横浜市の横浜みなとみらいホールで開かれた第76回全日本学生音楽コンクール全国大会(毎日新聞社主催)の声楽部門大学の部で第1位に輝いた。城西中時代の合唱経験と恩師の影響から音楽の世界を選び、バリトン歌手として夢を描く若き歌い手。「日本一」を通過点に、さらなる表現の深化を期している。
全国大会では、イタリアの作曲家ジュゼッペ・ベルディのオペラ「ファルスタッフ」から「夢か?まことか?」などを演奏。「曲の背景や心情に集中しながらテクニックを冷静に考えて歌う点では、力を出し切れた」。
一方で、「僕の目標はコンクール優勝より、とにかく歌がうまくなりたいということ。結果はうれしかったが、もっと勉強しなきゃと素直に思った」と振り返る。
中学時代の合唱で、協力して作り上げる音楽の魅力を知った。進路選択時、小学1年から続けるサッカーと迷った末、「未知数だが、飛び込んでみたら楽しいのでは」と音楽を続けることを選択。不来方高では普通科芸術学系音楽コースで学び、音楽部にも所属して合唱の経験も深めた。
東京の大学に進学するときも現在も、「歌がうまくなりたい」という強い思いは変わらない。「中学、高校、大学と出会ってきた先生方がいい人たちばかり。いい影響を頂いたり、助けてくれたりと、人に恵まれていると感じる。それがなかったら、いまの気持ちもなかった」と感謝を込める。
23年8月12日には、盛岡市盛岡駅西通の市民文化ホール(マリオス内)小ホールでコンサートを開く予定。不来方高の先輩でテノール歌手の金今陽祐さん、大学の恩師でもあるピアニストの河原忠之さんも出演する。
「自分たちがこれから日本を担っていく歌手になれるよう、まずは、いままで勉強してきたことを古里で見てもらいたい。難しいものだと思わず、生の声やピアノの音を純粋に楽しんでほしい」と呼び掛ける。
元サッカー少年とあり、昨年のFIFAワールドカップ(W杯)の日本代表の活躍にも刺激を受けた。「一発勝負で力を発揮するのは、自分たちのやっていることにも重なる。純粋にすごいし、やっぱりサッカーはいいなと思う」と破顔する。
現在は、東京都で開催される「ベルカントオペラフェスティバル」のマスタークラスを受講中。イタリアから来日した指導者の稽古を毎日7時間ほど、約1カ月間受け、1月14日に本番を迎える。
厳しい稽古の日々にも、「(指導者は)言語の本質を理解し、言葉の意味を重視して取り組んでいるので、アプローチが全然違う。すべてが新鮮」と、前向きに吸収する。
歌い手として目指す姿は、「ざっくり言うと、日本を代表するバリトン歌手。イタリアオペラをレパートリーとして活躍できるバリトンになり、ホール全体を包み込むような歌が歌いたい」。
高校の修学旅行で初めて鑑賞したオペラがベルディの「ファルスタッフ」。その後も学び続ける中で、自然とイタリアオペラ、特にベルディ作品に心引かれていった。「バリトンという声種に重きを置いて、すごくこだわって書いている。音楽が表情豊か」と魅力を語る。
将来的にはイタリアに留学し、現地の文化に触れながら歌いたいという思いも。「イタリアものを極めたいというとき、その先に必ずベルディがいる。時間がかかるので、焦らず声を育てて、技術を身に付けていきたい」と、目指すものへの道を着実に踏みしめる。
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