2023年
3月24日(金)

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サステナアワード 生物多様性保全賞を受賞 田村種農場の制作動画 在来の種と土壌生かした農業の姿 季節ごとに撮りためた映像を編集

2023-02-02

田村種農場の田村和大さんと中山記一さん(左から)

 岩手・盛岡在来作物の育種と生産・販売に取り組む「田村種農場」(作業拠点・盛岡市羽場、田村和大代表)が制作した動画が、「サステナアワード2022 伝えたい日本の〝サステナブル〟」(あふの環2030プロジェクト主催)で生物多様性保全賞を受賞した。「風土に繋ぐ種、次世代のために」と題し、在来の種と土壌を生かした農業に取り組む田村代表(43)の姿を、同農場コンテンツ制作室の中山記一(のりかず)さん(33)が撮影して編集した。新型コロナ禍でも人とつながりを持とうと、YouTube(ユーチューブ)などで動画配信に力を入れてきた田村代表は「常にこちら側からの発信だったが、同賞はこれまでの活動に対するもの。私たちのような、大規模ではない農家の活動が評価されてうれしい」と喜ぶ。

 同賞は、農水省、消費者庁、環境省が連携し、食と農林水産業に関わる持続可能な生産・サービス・商品を扱う地域、生産者、事業者の取り組み動画を募集するもの。全国から79作品の応募があり、農水大臣賞など各賞8点、優秀賞3点が決まった。同農場の作品は東北地区から唯一、受賞11作品の一つに選ばれた。

 動画は3分21秒。義兄である田村代表の誘いを受け、21年10月に東京から盛岡に移住した中山さんが、季節ごとに撮りためた動画を編集。田村代表が「盛岡ネギ」を収穫して種を採る様子や、在来種にこだわって農薬・化学肥料を使わずに作物を育てる思いを、「圧倒的に素晴らしく、インパクトがある」(中山さん)という盛岡の自然を背景に映像に収めた。

 田村代表は、新規就農のため、2011年3月1日に東京から盛岡に帰郷。その10日後に発生した東日本大震災で、注文していた農業資材や種が届かず、「遠い所から運ばれるものに頼りきっていたこと」に気付いたという。


受賞作品「風土に繋ぐ種、次世代のために」より、盛岡ネギの掘り起こし作業

 動画では、「種が土に落ちて、芽が出て、花を咲かせ、また種ができる」という自然循環に注目し、その土地の気候風土に合った作物をつないでいくという思いも伝えている。

 同農場で育てている作物は、水稲、大豆、小豆、野菜など20~30種ほど。県内の農家などを訪ね歩いて集めた。水分が少なめで寒干し大根にも適した「雉頭大根(きじがしらだいこん)」など、岩手の風土に合い、味も良い作物に多く出合った。

 就農から3年目に盛岡市認定農業者に認定。10年を経て、在来種の作物が土になじみ、収量が見込めるようになっているが、ほ場の「黒ボク土」は作物に養分を渡しにくい土壌でもある。安定的な収量が確保できなければ次の世代に引き継ぐことができないと、今後は植物から作った堆肥を施すなど、土壌づくりにも取り組む考えだ。

 田村代表は「健全な種を次の世代にお渡しする。そのためにできることをやっていきたい」と力を込める。

 同賞の表彰式は、1月24日に東京都千代田区のアグベンチャーラボで行われた。受賞作品は、農水省ホームページで公開されている。優良事例として、国内外に広く発信される。同農場のYouTubeチャンネルは「田村種農場の農業日記」。



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