2023年
3月24日(金)

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胡堂と古里の関わり紹介 19日まで記念館で企画展 生誕140周年を記念し 数々のエピソードに温かな人柄

2023-03-02

 「胡堂さんが古里にどう思いを寄せていたかを知ってほしい」と話す千葉学芸員

 紫波町出身の小説家、野村胡堂(1882~1963)の生誕140周年を記念した企画展「胡堂とふるさと~わが郷土への郷愁~」が、同町彦部の野村胡堂・あらえびす記念館で開かれている。紫波郡大巻村(現紫波町大巻)に生まれ育った胡堂と古里、家族の関わりが伝わるエピソード、同町に残る貢献などを紹介している。19日まで。

 同展は4部構成。

 第1部では、古里での幼少期を取り上げる。彦部尋常小学校から日詰にあった紫波高等小学校進んだ胡堂。当時、蔵にあった父長四郎の蔵書を読みふけっていた胡堂は、そこで覚えた物語を下校中に友人たちに聞かせたことで人気者になったとのエピソードも残る。胡堂が後年描いた、思い出の蔵の絵も展示している。

 第2部では、盛岡中学を卒業後に上京した胡堂と家族の関わり、妻ハナと子どもたちとの帰省の様子を紹介。父や弟の耕次郎とのやり取りが伝わる手紙も見られ、離れていても故郷とのつながりがあったことが分かる。


旅行記「故郷への旅」(野村胡堂記)1920年12月17日


 「故郷への旅」と題した帳面には、1920年の3月29日から4月4日までの、一家での帰省の様子を記録。幼い子どもたちに思い出を残す意図で記された旅行記からは、家族や故郷の人々との触れ合いとともに、当時の大巻・彦部地区や盛岡市の様子もうかがい知れる。

 第3部は、随筆やスケッチをもとに、同町内の思い出の場所などに着目。高等小学校に通う際に渡し舟に乗った赤石渡船場跡や母校、日詰駅などのエピソードを紹介する。表紙に「故郷之寫生」と記したスケッチブックには風景や人物のスケッチが残り、親しみのあるまなざしも伝わってくる。

 第4部は、「胡堂がふるさとへ遺したもの」として、古里への貢献をテーマにする。彦部小のピアノ購入費の寄付、蔵書の寄贈などで紫波町に恩返しをした胡堂は、56年に最初の名誉町民に推挙された。その後、レコードコレクションの寄贈(57年東京都に、95年紫波町に移管)、野村学芸財団設立でも貢献している。


野村胡堂・あらえびす記念館前に建つ石碑


 同記念館を含め、町内の胡堂ゆかりの3カ所には石碑が建立されている。古里に暮らしたのは盛岡中学に進学する13歳までだったが、古里を愛した胡堂と同町の人々との温かなつながりは現在も息づいている。

 同館の千葉茉耶学芸員は「随筆の文章に人柄もにじみ出ている。誰しも持っている古里への親しみから、胡堂さんを身近に感じてもらえるのでは。故郷とのつながりという、なかなか触れられない部分に触れる機会になった」と話し、町内外の人々に広く鑑賞を勧めている。

 午前9時から午後4時半(入館は同4時)まで。入館料は一般310円、小中高生150円(団体割引あり)。休館日は毎週月曜(祝日の場合は翌日)。



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