2023年
3月24日(金)

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<復興教育の現在地>「いきる」「かかわる」「そなえる」育てる みたけ支援学校高等部 主体的な避難法学ぶ 拠点校として地域と連携

2023-03-10

 2011年の東日本大震災津波をきっかけに始まった「いわての復興教育」は、郷土を愛し、その復興と発展を支える人材を育成するため、各校の教育活動を通して三つの教育的価値「いきる」「かかわる」「そなえる」を育てる取り組み。本県の小学校、中学校、高校、支援学校で実践され、就学前の子どもたちにも広がっている。各校、各地域の特性に合わせて展開する学びは、震災の発災から12年となるいま、子どもたちに何を伝えているのか。22年度の盛岡地域の取り組み事例を取材し、「いわての復興教育」の現在地を訪ねた。

県警察学校と共同で行ったバケツ消火リレー。(同支援学校提供)

 盛岡市青山の県立みたけ支援学校高等部(工藤弘毅校長、生徒42人)は今年度、学校安全総合支援事業「いわての復興教育スクール」を、拠点校として実施した。生徒らは三つの教育的価値をキーワードに、地域と連携し災害時の行動を学んだ。

 学習は22年7月から、全6回実施。初回は自衛隊岩手地方協力本部から講師を招き、厨川中の支援教室の生徒とともに、「新聞紙スリッパ」や「ペットボトルランタン」などを作り、身近にあるものを活用して災害に備えた。

 同校近隣の県警察学校との合同訓練では、バケツ消火リレーを協力して行った。コロナ禍により、両校の交流は3年ぶりだった。

 事業を担当した八島広至教諭(44)は「警察学校の皆さんも、この3年は、地域と一度も触れ合うことなく、配属されたという。感謝をお伝えする機会となった」と意義を述べた。

 同11月22日には、2年生の生徒8人が陸前高田市を訪問。高田松原復興祈念公園や津波伝承館を見学した。

 仮設住宅を活用した「たまご村」では、施設内のカフェオーナーから体験談や震災復興にかける思いを直接聞き、自分で自分の身を守ることの大切さを学んだ。

 新年度から生徒会長を務める千葉美幸さん(2年)は「画像ではなく、実物で流された後の建物をみた。心が痛んだ。奇跡の一本松のように強い人になりたい」と思いを新たにしていた。


緊急地震速報を聴き、身を守る「シェイクアウト」を実践した


 事業ではそのほか、地震体験車両による揺れの体験や、避難所生活体験で段ボールベッド、仕切りの作成を学習。避難所設営に参画し、実践する力を育んだ。

 3月3日は、復興教育事業の総まとめとして、「3・11防災教育の日」を全生徒で行った。生徒らは緊急地震速報の音声を聴き、身体を守る「シェイクアウト」を復習。

 震災発災時、同校に赴任していた八島教諭は、当時の状況をスライドで紹介。余震に気を付けながら、自転車置き場で寒さをしのいだことや、校舎や体育館の被害状況などを示し、震災を風化させない取り組みを行った。

 八島教諭は「本校は避難所指定の学校ではないが、いつも支援される側の生徒が、周りの人のために避難所を作るなど、貴重な体験ができた。来年度以降も継続していきたい」と話し、地域と連携した防災教育の意義を強調していた。

    (高村明彦)



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