2023年
3月24日(金)

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<復興教育の現在地>中津川から環境と防災学ぶ 宮古・津軽石小と交流 杜陵小 水害想定の避難訓練も

2023-03-14

杜陵小5年生が育て、観察しているサケの稚魚を眺める6年生

 中津川から学ぶ、自然環境と防災―。盛岡市肴町の杜陵小(中村幸子校長、児童223人)は、下橋中、桜城小との小中3校連携で復興防災教育に取り組んでいる。学校の近くを流れる中津川は、かつて洪水や水害を繰り返した歴史があるが、秋にはサケが遡上(そじょう)し、海につながる豊かな恵みがある。2021年度から取り組む「学校安全総合支援事業」(いわての復興教育スクール〈内陸〉)で、同小児童は、サケと中津川の学習を経て宮古市・津軽石小の児童とも交流。新型コロナウイルスの影響で、今年度はオンラインでの交流となったが、地域の環境を生かした復興教育・環境学習を次年度へ、さらに中学校での学びへとつなげていく。(藤澤則子)

 取り組みの一つである、第5学年こずかた学習(総合的な学習)「わたしたちの中津川」では、中津川の水質・生物調査を通して身近な環境に対する関心を高め、国土交通省の担当者や地域の下橋町内会役員から清流中津川の魅力、洪水の歴史を聞いて学びを深めた。さらに、サケの発眼卵(はつがんたまご)を津軽石ふ化場から譲り受け、5年生が水槽で大切に飼育、観察してきた。


5年生が参加した津軽石小とのオンライン交流(22年度、杜陵小提供)


 2日に中津川の川原でサケの稚魚の放流会があり、全校児童が参加した。今年1月から学校で育ててきた100匹を含め、津軽石ふ化場、簗川ふ化場の協力で8千匹の稚魚を放流した。

 菅原煌介さん(5年)は「頑張って海まで行って、4年後に戻ってきてほしい」と見送った。菅井絢音さん(同)は、津軽石小とのオンライン交流を経て、「サケにはいろんな育て方があると知り、きれいな川でしか生きることができないことも知った」と関心を高めた。

 前年度に宮古市を訪問した6年生は活動を振り返り、中津川と海のつながりを実感した。

 津軽石小では、班ごとに各校の学習成果を発表し合い、津軽石ふ化場、魚市場も見学。菅原秀介さんと吉田おんさん(いずれも6年)は「川のプラスチックごみを放置しておくと、海に流れてマイクロプラスチックごみになり、生き物に影響を及ぼす。川と海がつながっていると感じた」とうなずく。


全校児童が参加して実施している水害時避難訓練(22年度、杜陵小提供)


 同事業を担当する田中亨副校長は「環境を大事にすることも、東日本大震災からの復興につながる。子どもたちは、目の前の自然を考え、大事にすることを感じ取ったのでは。復興防災教育は中学でも続くので、さらに深めていってほしい」と話す。

 杜陵小の間近を流れる中津川は、約800㍍下流で北上川、雫石川と合流し、同校周辺地域は水害時0・5~3・0㍍の浸水が予想されている。

 同校では20年度から、水害を想定した全校の避難訓練を実施しており、今年度は防災アドバイザーの助言を参考に避難場所(盛岡劇場)までの順路を見直し、より安全で確実な避難を心掛けた。

 田中副校長は「実際の避難時は、さらに多くの地域の方のご協力をいただくことになるかと思う。中津川に一番近い学校として、引き続き安全防災教育に取り組み、中津川にかかわる団体とも協力しながら活動を広げていきたい」と見据える。



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