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- 新収蔵の自然史資料公開 県立博物館 チョウセンアカシジミの標本など161件 来月7日まで 蚕体解剖模型、植物化石も
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2023-04-20
本県など国内外で採集された「チョウセンアカシジミ」の2千点を超える標本(青山之也コレクション)
県立博物館(髙橋廣至館長)の2022年度テーマ展「新収蔵・新指定展Ⅱ 自然史編~2018年度からの新コレクション~」(同館、県文化振興事業団主催)は、盛岡市上田松屋敷の同館特別展示室で開かれている。生物の剥製、化石、岩石標本など、新たに収集した自然史資料161件を公開している。5月7日まで。
同館の生物、地質(自然史)部門では18年度以降、約3万8千点の資料を新たに登録。本展では「生物」「地質」の2章構成で、主に個人から寄贈されたよりすぐりの資料を展示している。
担当した佐藤修一郎主任専門学芸調査員は「寄贈いただき、初めて公開する資料ばかり。学術的な価値はもちろん、さまざまなコレクションをアラカルトのように楽しんでもらえればうれしい」と来館を呼び掛ける。
生物部門で目を引くのは、国内では岩手、山形、新潟の3県の一部に生息している絶滅危惧種「チョウセンアカシジミ」の2千点を超える標本(青山之也コレクション)。国内で初めて確認されたのが1952年の田野畑村だったことから、このチョウの調査を重ねてきた青山之也さん(千葉県浦安市)から同館に寄贈された。
本県の雫石町長山、岩泉町安家元村など国内の生息地に加え、ロシア、北朝鮮、韓国、中国産の標本も含まれた貴重なコレクション。同じ種ではあるが、生息地ごとに羽の模様や色が少しずつ異なっているところも興味深い。
農業学校の生徒の教材だった「蚕体解剖模型」(大正時代)
創立120周年を迎えた県立水沢農高からは、農場の倉庫に保管されていた古い教材や標本が2021年に同館に移管された。
「蚕体(さんたい)解剖模型」は、明治~大正時代に製作・販売されていた養蚕指導用の教材。大型の模型の中には精巧に作られた消化管や、蚕の体内で絹糸タンパクを合成して分泌する器官「絹糸腺(けんしせん)」などが納められている。
当時の日本では養蚕業・製糸業が盛んで、同校でも養蚕が重要な指導項目だったことがうかがえる。同模型の箱書きによると、胆沢郡立胆沢農業学校(現水沢農高)が1919(大正8)年に購入したことが分かっている。
地質部門で最も古い資料は、第14次南極地域観測隊(1973年)の隊員が採集し、日本に持ち帰った「南極片麻岩(へんまがん)」(古生代カンブリア紀、南極・昭和基地付近)。片麻岩は、もとの岩石が変成作用でできたもので、少なくとも5億年以上の岩石と推測される。
雫石町用の沢周辺で採集された植物化石(新生代、五井昭一コレクション)
五井昭一さん(秋田市)から寄贈されたコレクションでは、久慈市、雫石町で産出された植物の化石を紹介している。
雫石町の標本は多くの恐竜が絶滅し、哺乳類が繁栄した新生代の植物の化石。同町用の沢周辺で採集され、いまから約500万年前、この地にあった大きな湖の底に沈んだ植物が化石として地層中に保存された。そのため状態が良く、葉脈の一つ一つも確認することができる。
宮古層群から見つかった中生代前期白亜紀のアンモナイト化石の中には、新種の可能性があり、研究が進められている資料もあり、関心を集めている。受入資料が展示標本になるまでを実際の岩石や化石標本を使って紹介し、博物館の調査研究活動を分かりやすく解説している。
午前9時半から午後4時半(入館は同4時)まで。入館料は一般330円、学生150円、高校生以下無料。24日は休館。電話019―661―2831。
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