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- 著書「本屋、地元に生きる」が話題に さわや書店の栗澤順一さん 「街のハブとして利用して」 読書文化の未来のため奔走
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2023-05-05
さわや書店の栗澤順一さんと著書「本屋、地元に生きる」
さわや書店(本社・盛岡市)の書店員、栗澤順一さん(50)の著書「本屋、地元に生きる」(KADOKAWA刊)が2月の発売以来、話題を集めている。「いずれ本屋は町から消えてしまうのか?」│。時代の流れの中で書店を取り巻く環境が厳しさを増す中、「まちの本屋」として貢献を模索。さまざまな立場の人と連携しながら地域の読書文化を盛り立てる、挑戦と情熱が詰まった1冊となっている。
栗澤さんは釜石市出身。岩手大を卒業後、広告代理店勤務を経て、1999年にさわや書店入社。本店専門書フロア、フェザン店次長、仙北店店長などを務め、現在は外商部兼商品管理部部長。
同著は4章構成。巻末には栗澤さんと元同社フェザン店統括店長の田口幹人さん(NPO法人読書の時間理事長)の対談も収録している。
第1章「さわや書店とはどんな本屋か」では、栗澤さんの入社から現在に至るまでの、盛岡の書店業界の変化とさわや書店の動向を紹介。自身の前職時代からの経験に触れる第2章「仕事で必要なノウハウはすべて営業で学んだ」、外商の立場でのイベント企画など幅広い取り組みを記す第3章「地域経済の輪のなかで」、第4章「ヒントはいつもまちの中に」と続く。
メディアで本を紹介し、多彩なイベントに携わり、県内のしょうゆ醸造会社が合同で開発した減塩しょうゆのパッケージ開発も行う。従来の書店員のイメージにとどまらない、ユニークな取り組みも多い。
書店が地域に必要とされるためには、「時代の流れに抗えないなどと言ってしまわず、必要とされる存在になるにはどうすればいいかを考えていくしかないのです」とつづる。
これまでの仕事をまとめたことで、栗澤さんは「想像以上に多くのお客さん、知り合いに応援してもらっていたと改めて感じた。書店の主流ではない部分を歩いてきたので、書店業界について語るつもりはなく、地方にあって本屋が生きていくにはこういうパターンがあるということ」と考えを持つ。
「年齢を問わず、誰でも入ることができ、お金をあまり使わなくていいのは小売りの中で書店だけ。街のハブ(結節点)的な存在として、いろいろな意味で本屋を使ってほしい」と願い、「(仕事は)まだ走り出したばかり。もっと、まちの書店として定着するよう取り組んでいきたい」と決意を込めた。
同著は四六判224㌻、税込み1650円。さわや書店をはじめ、各書店で購入できる。
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