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- 姫神山登頂5000回超え 盛岡市下田の遠藤茂さん 65歳から登り続ける 健康回復・維持を目的に
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2023-05-20
5千回目の姫神山登頂を果たしたときの遠藤さん(紺野衆さん提供)
姫神山(1124㍍)は21日、山開きを迎える。その麗しき姿の山に、5千回以上も登っている人がいる。盛岡市下田仲平の農業、遠藤茂さん(84)だ。昨年12月に偉業を達した後も、日課のごとく登り続ける気力、体力に、周囲の人も驚嘆している。
遠藤さんが姫神山に登り始めたのは65歳のとき。当時、体重が80㌔を超え、「体が重くて、何とかしようと思った」。自宅の窓から姫神山が見えていたこともあって、登山を決断した。
姫神山の登山コースは四つあるが、遠藤さんが最初に選んだのは一番ポピュラーな一本杉コース。「苦しかった」。普通の人なら1時間半を切るぐらいで登頂するのだが、約2時間もかかった。
それが、1~2年もすると、1時間程度で登れるようになった。体重も60㌔に落ちた。70歳代に入ると、さらにペースが上がって、登りも下りも40分程度に。「走るように登った。1日2回、3回が当たり前のようになった」。
1年に1度は、1日5回の登頂や、自宅から姫神山までの道のり約15㌔を歩いて登ることを、自分に課している。
12年ほど前には、クマにも遭遇した。「3月ごろ、雪があるときだった」。約30㍍先にいた。クマに遭ったのはその1回だけだが、クマが避けていくよう、登山のときは歌ったり、「ファイト」と自分に声掛けをしている。
5千回目の登頂を果たしたのは昨年12月4日。松園第二病院の副院長、紺野衆さん(66)が同行した。
紺野さんは「65歳からでも、健康を回復できる。これからは人生100年の時代。運動しないと、健康は維持できない。遠藤さんはいいお手本」と賞賛する。「コツコツと続けている。そうすれば、肉体は強くなるし、それに伴って、心も強くなる」とも。
遠藤さんは、登山靴を持っていない。農作業で履き慣れた長靴が相棒だ。岩手山(2038㍍)も年に数回登っているが、「登りは娘からもらったシューズだが、下りは長靴」と豪快に笑う。雪をこいでいった姫神山登頂5千回目のときも長靴だった。
その後も、姫神山通いは変わらず。最近は午前中、妻のヨシエさん(85)の畑仕事を手伝ってから、午後2時か3時ごろ、山に向かう。
登山を通じ、いろんな人と出会ったことも喜びだ。ヨシエさんは「山に行けば、『写真を一緒に』とスター扱い」と笑う。
「何回目標というのはない。一歩一歩。頑張れば長生きできるという思いだけ。車の運転ができるうちは登りたい。来年の免許更新に挑戦し、絶対受かりたい。90歳までは登りたいなあ」と目を細めて、先を見据える。
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