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水産の缶詰めロボットで 岩大理工学部の三好准教授開発 釜石市の工場(津田商店)に導入へ

2019-12-14

サンマを運ぶ非接触パットのサイズを調整する三好准教授

 冷凍・調理した魚を缶詰めする作業を代行するロボットを、岩手大理工学部システム創成工学科の三好扶准教授(46)のチームが開発した。魚の切り身の体積などを一つずつ識別し、それを組み合わせて一定量を缶に詰める技術。来夏から実証実験を始め、2022年に釜石市の水産加工品製造業、津田商店に導入する。震災後に落ち込んでいる沿岸部の水産会社の収益力を高めると期待され、技術を応用して他業種にも利用を広げる。

 2015年夏に、三好准教授を研究代表として三陸の震災復興事業を進める「農林水産ロボティクス研究グループ」を発足。まず水産加工業の作業を省力化させるロボットを開発しようと、缶詰・調理冷凍食品などを製造している津田商店と協力し、同社主力商品「サンマのかば焼き缶詰」の詰め作業の自動化に乗り出した。

 詰め作業は、ベルトコンベヤーで流れてくる焼かれた切り身を、規定の約80㌘(1缶)の重さになるよう尾部と腹部を1枚ずつチョイスし、缶に詰める。目視で身の大きさや重さを選ぶ経験則の技術が要るのと、底面の尾部は皮面を上側に、それに乗せる腹部は皮面を下側になるよう重ねる作業があり、機械化が難しかった。

 しかし「詰め作業に従事するのは12人。水産食品業界での従業員一人当たりの労働生産額は年間750万円で、12人で計算すると年間9千万円。ルーティン作業をロボット1台(約5千万円)に置き換えれば、数千万円分の生産力を人の知恵が必要な商品開発などに充てられる」と理論立て、計画をスタート。16 年度に、農水省の「革新的技術開発・緊急展開事業」と「農林水産業の食品産業科学技術研究推進事業」に採択され、開発資金約3千万円を得た。

 研究ではまず、人の手による切り身の選択方法や組み合わせなどのルールを、AI(人工知能)を活用して調査・分析。画像から切り身の体積や面積などを識別する技術を17年3月に確立させた。

 規定量通りに切り身を選ぶ成功率は、手作業が約90%、ロボットが98%。ロボットが大きく上回る。さらにベルトコンベヤーから身を缶に移す作業を、へら状のロボットハンドからサイクロンの力でつり上げる非接触パットに変え、成功率を100%にした。

 さらに、最初に尾部を缶に入れ、その尾部の重量に合わせて腹部を選ぶ方式に改良し、人間と同等の処理速度を可能にした。約8時間で10万個を缶詰めするのに12人の人手が必要だったのが、ロボット1台で足りるようになった。

 市内企業と共同で試作ロボットを作り、20年夏から津田商店の工場で実証実験、実用化と進める。このロボットはサバやイワシの缶詰めはもちろん、コンビニ弁当やレトルト食品などの詰め作業にも応用できるため、ゆくゆくは農業や工業などにも広げる。

 三好准教授は「今回を成功事例に、ロボットの導入を水産加工業界全体に広げたい」とし、「技術の応用を重ね、人の作業が困難な海底や宇宙で使えるロボットを作るのが目標。今までの不可能を可能にする技術を作り続ける」と研究への意欲を見せていた。



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