2020年
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もりおか復興支援セン被災者戸別訪問 声なき声に寄り添う 東日本大震災から9年

2020-03-11

 備後第一アパートに暮らす高須賀カツ子さん(左)。「復興ぞうきん」の制作が生活の張り合いになっている。話に耳を傾ける生活支援相談員の千村真一さん

 東日本大震災から11日で丸9年を迎えた。新型コロナウイルス感染症の影響で追悼行事も最小限にせざるを得ない異例の事態だが、犠牲者の鎮魂と被災地の復興を願う思いに変わりはなく、各地で深い祈りがささげられる。盛岡市のもりおか復興支援センター(金野万里センター長)の活動の中に、内陸避難者に対する定期的な訪問がある。被災者の声なき声を拾い、適切な相談機関や支援につなげる上で大きな役割を果たしてきた。国は来年度で復興・創生期間が終了した後も、心のケアなど必要な支援事業は継続させる方針を示しているが、復興予算を活用した事業を、どこまで継続できるかは不透明。困難ケースに息長く寄り添う必要性を発信する一方、地域で互いに支え合えるコミュニティーづくりが重要な課題となっている。

 「ごめんください。変わりありませんか」。2月25日、内陸災害公営住宅として整備された県営備後第一アパートの一室。同センターの生活支援相談員の千村真一さん(49)と藤澤久美子さん(40)が、一人暮らしの高須賀カツ子さん(80)のもとを訪問した。玄関先で二言三言、言葉を交わすだけで終わる訪問先も多いが、互いに気心が知れている高須賀さんの家では、居間まで上がって世間話をするのが常だ。 

 体調のこと、近所づきあいのこと、終活問題まで話は尽きない。「母親は子どもにとって手本、強くなければと思うんですよ。迷惑はかけたくない」と高須賀さん。近所に暮らす二女をはじめ、独立した3人の子どもたちも、その家族も、とても良くしてくれるが、子どもたちの前で弱いところは見せたくないという。千村さんたちの訪問は「本当にありがたい。いつも待っています」と感謝した。

■二極化する内陸避難者

 もりおか復興支援センターは、市内にいる内陸避難者538世帯を把握。このうち高齢者の一人暮らしなど69世帯は2週間から1カ月に1回、232世帯は2~3カ月に1回、生活相談支援員が2人組みで戸別訪問し生活の様子を聞く。訪問を断られている世帯を除き、目立った課題がないと思われる残りの世帯も半年から1年に1回は足を運ぶ。

 内陸避難者のうち9割は盛岡に定住予定。安定した暮らしを取り戻した世帯と、年ごとに暮らしが悪化している世帯の二極化が目立つ。被災した高齢の親の年金に頼った暮らしで、定職に就くタイミングを逃してしまった中年男性、成長した子どもの不登校や進学の経済負担に悩む一人親家庭│。複合的な課題を抱えた世帯は必ずしも高齢世帯とは限らない。若者、子どもの問題など発災から9年が経過し、扱う課題にも変化が見える。

 最近まで元気だった人が、急な病気やけがで生活が一変していることもある。実際に暮らしを目にし、話を聞くと、震災津波の経験を地域全体で共有している沿岸地域とは異なった孤立感、悩みが浮かび上がる。

 無料で住める仮設住宅と違い、災害公営住宅は月々の家賃が必要。被災者に対する医療費の一部負担金の免除など、発災から10年を機に、さまざまな支援措置が終了すれば、新たな課題に直面する世帯も増える。暮らしぶりを丁寧に見守り、話に耳を傾ける必要があるという。

 「発災当時も言われていたことだが、沿岸出身の被災者は我慢強い。自分から困っているとはなかなか言わない。顔と顔とを合わせるからこそ、分かることがある」と金野センター長(61)。「複合的な問題の解決は個別支援だけでは難しい。いろいろな機関がつながり、一緒に取り組んでいかなければならない」と話した。
(馬場恵)



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