2020年
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天然素材で家づくり 伝統工法受け継ぐ磯和さん 共生の知恵次世代に

2020-03-23

天然素材の家づくりに励む磯和亮治さん

 茅(かや)、木羽(こば)、天然スレート、漆喰(しっくい)―。現在では、ぐっと数が減った天然素材で造る家の良さを世に広めたいと活動している職人がいる。Earth Building Iwate(アース ビルディング イワテ)代表の二級建築士・磯和亮治さん(42)=盛岡市津志田南2丁目。師匠や仲間の助けを借り、5年ほど前からほぼ一人で天然素材を生かした自宅の建築に取り組んでいる。東日本大震災で倒壊した古民家の柱や梁(はり)も再利用。「100年以上持つ家を完成させ、天然素材を生かす文化を未来へ引き継ぎたい」と思いを込める。

 木造二階建ての自宅は都南地区の約60平方㍍の土地に建築中。延べ床面積は約120平方㍍。太く、黒光りする柱や梁は、明治時代に建築された宮城県石巻市の古民家から運んだ。建物は大震災で倒壊したが、歴史を刻んだ建材は二度と手に入らない貴重なもの。廃棄しては、忍びないと活用の道を探った。

 壁は漆喰仕上げ。天然の漆喰壁は、調湿性、抗菌性、不燃性も高い。二酸化炭素を吸収する特徴もあり、シックハウス症候群やアレルギー、地球温暖化など現代の環境課題を考えれば、古くて新しい最良の素材だ。

 こだわりの屋根は天然スレートぶき。石巻産の粘板岩を30㌢×18㌢の薄い板状にカットしたものを約6千枚、10㌢間隔で並べている。天然スレートの外壁や屋根は、海外では一般的だが、人工の化粧スレートが普及した国内では珍しい。

 かつて天然スレートは、現在、国内唯一の生産地である石巻市雄勝町をはじめ、岩手を含めた三陸沿岸で生産され、天然スレートぶきの家屋も多かった。東日本大震災で、雄勝町の多くの天然スレートや三陸の伝統家屋が失われており、そうした地域文化を少しでも見える形で残しておきたいという思いもある。

 組み立てた建材が一度は台風で倒壊。基礎から全てやり直すなど、家の形になるまで長い時間を要したが、ようやくゴールが見えてきた。自宅を一つのモデルに、天然素材の家づくりを広めていきたいという。

 ■カリスマ職人から学ぶ


天然スレート屋根などにこだわり建築中の磯和さんの自宅


 磯和さんは東大阪市出身。山形大で林業を学び、茅ぶき屋根など特殊建築を専門とする石巻市の会社に就職した。日本古来の工法を有する職人が現場のニーズに応じて集められ、神社や仏閣、文化財建築などの改築、修復に取り組む職場。茅ぶきをはじめ、木羽ぶき、天然スレートぶきなど、それぞれの「カリスマ職人」から技術を学ぶ機会に恵まれた。自らの手で一から家を建てたいと建築士の資格も取った。

 電動工具に頼らず、昔ながらの道具でコツコツと建築中の自宅には、7歳と4歳の二人の息子をはじめ、近所の子どもたちも遊びにやって来る。来る者いとわず、けがをさせないよう見守りながら、できる作業は挑戦させる。「こういう建築現場を体験した子どもたちは、いつかその良さにも気付いてくれる」と期待する。

 茅ぶき屋根に使う茅が成長に要する時間はわずか1年。茅場をきちんと管理しさえすれば究極の天然資源だ。共有林によく植えられた栗は成長が早い上、固くて丈夫。建材に適していることはもちろん、大きくなるまで実も食料として利用できた。「伝統的な家づくりには自然と共生する知恵が詰まっている。今こそ見直すべきでは」と問い掛ける。



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