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刻む詩魂を染め上げて 岩手拓本研究会の伊藤一彦さん 全国公募拓展で入賞

2020-03-24

 第15回記念全国公募拓展で(一財)伝統的工芸品産業振興協会賞を受けた伊藤さん

 「第15回記念全国公募拓展―絵になる拓本展―」(日図デザイン博物館、日本図案家協会主催)で、岩手拓本研究会(佐々木敏夫会長)の会員で元小学校教員の伊藤一彦さん(75)=盛岡市愛宕町=が(一財)伝統的工芸品産業振興協会賞を受賞した。拓本歴は8年といい、2回目の出品での入賞に「8年教わった記念にはなったのかな」と笑顔を見せる。

 隔年で開かれている公募展日図デザイン博物館(京都府)で2月18、19日に開かれ、展示と表彰が行われた。「拓本の部」「拓彩の部」に56作品が寄せられ、文部科学大臣賞など入賞18点が選出されている。

 伊藤さんの受賞作は、近代日本の詩人、歌人などとして活躍した大町桂月(1869~1925)の句「鶯(うぐいす)や脚下積雪(かたゆき)雲の海」とユーモラスな絵を刻んだ碑の拓本。青森県十和田市の「道の駅 奥入瀬」敷地内にある碑という。高知県出身の大町桂月は十和田市と奥入瀬を深く愛し、晩年は同市の蔦温泉に居住。同市をはじめ碑は各地に多く残る。

 伊藤さんは蔦温泉の碑を訪ねて行ったが、倒れてしまっていて見る許可が降りなかった。しかし、帰りに立ち寄った道の駅でこの碑を見つけ、許可を取って拓を取ったという。「先生の教えに従い、字の周りはできるだけ同じ濃さになるようにした。素材が面白く、なかなかこういう碑に出合うことはないと思い、出品した」と目を細める。

 岩手拓本研究会は谷藤聰夫顧問の指導で盛岡市を拠点に活動している会で、今年で発足20年となる。伊藤さんは「拓本、裏打ち、表具まで丁寧に教えてくれる先生。入賞は全て谷藤先生のおかげ」と感謝する。「拓本は白黒だが、濃く、薄くとやり方がいろいろある。白黒だけれど奥が深い。注意して見ないと気付かない石碑に出合い、いろいろ調べていくのも面白い」と魅力を語る。

 2017年には盛岡市の中津川沿いの詩碑や歌碑をまとめた冊子「石碑探訪」も発行。拓本から身近な場所の石碑、そこに息づく先人の思いへと関心を広げている。「盛岡に生まれ育っていながら気付かなかったものもある。石碑を知る楽しみ、拓本を取る楽しみ、表具をして展示会に出す楽しみがある」と伊藤さん。「盛岡市を中心に、沿岸や青森などにも足を伸ばして調べて歩きたい。元気なうちは続けていきたいと思う」と語った。



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