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命守る視覚情報を マスク着用で読み取れず 髙橋副会長 齋藤事務局長(県聴覚障害者協会)に聞く

2020-05-03

聴覚障害者の現状を訴える髙橋幸子副会長(左)と齋藤智子事務局長

 新型コロナウイルス感染症の拡大で、マスク着用が日常化している中、聴覚障害者は口の動きが読み取れず、コミュニケーションに苦慮している。これまでは、サークル活動などで集まり、互いの情報を交換することで、情報不足を補っていたが、それも難しい。新型コロナウイルス感染症の情報は命に関わる緊急性が高いものもあり「情報が届きにくい人にこそ伝える工夫をしてほしい」と訴える。県聴覚障害者協会の髙橋幸子副会長(70)と齋藤智子事務局長(50)に聴覚障害者が置かれている現状と求められる配慮について話を聞いた。

 ―どんなことに困っていますか。

 店や施設が休業になったり、開いている時間が短縮になったり。細かな情報が入ってきません。実際に行ってみて「あれっ」ということが多々ある。聞こえている人は、ラジオなど耳からの情報もあるせいか情報をキャッチするのが早い。

 以前はテレビニュースの字幕がもっと少なかったので、見ただけでは分からず、翌朝のの新聞で大まかな事実を知るということがよくあった。情報をキャッチするのにタイムラグがあるのは現在もあまり変わりません。インターネットが使える人は比較的、情報を得られますが個人差が大きい。これまでは人が集まった時に、互いに情報を確認しながら、情報を修正していた訳ですが今は、それが難しい。

 ―マスクもコミュニケーションの壁になっていると聞きます。

 マスクをしていると、相手の人が話しているのか、いないのかが分かりません。「外してほしい」とお願いできる状況でもありません。

 例えば、コンビニエンスストアで「お箸」と言っているのか、「おしぼり」と言っているのか、「温めは」と言っているのかが分からない。分からないのでうんうんと適当にうなずいていると、温めてほしくないものまで温められているといったことがよくあります。

 逆に最近は「いりませんか」という聞き方なので、全部うなずいていると、必要な物が何も付いてこない。話し掛けられていることが分からず、相手のムッとした顔で初めて気付くこともあります。コンビニぐらいと思うかもしれませんが、ちょっとしたことでもストレスを感じていることを知ってほしい。


新型コロナウイルス感染症についてのFAX相談票(県のホームページから)。各保健所や県庁医療政策室がファクスによる相談も受け付けている。

 ―コロナウイルス感染症に関する情報も行き届いていないと。

 これまでは我慢してきたのですが、コロナウイルスのような命に関わる情報は、さすがに知らなかったでは済まされません。平穏な時であれば、隣近所の助けを借り、教えてもらうということもあるのでしょうが、社会全体が神経質になっている時に、わざわざ隣にいって尋ねることはできません。行政機関や報道機関は、聞こえる人たちへのアプローチだけではなく、情報が伝わりにくい人たちへのアプローチほど考えてもらいたい。

 特に私たちの最大の情報源であるテレビは、手話を付ける、字幕を出すなど配慮をお願いしたい。「注意喚起」、「地域の情報」など見てすぐに分かる情報発信があればありがたい。緊急を要する情報であれば、あるほど、私たちには届きにくくなっている。共助に頼るのではなく、公の機関としての責任を果たしてほしい。

 ―知事の記者会見に手話通訳が配置されました。

 手話通訳が付いたことは評価しますが、正直なところ、何が言いたいのかよく分からなかった。送信された画像も不鮮明でスマホの小さなサイズで見ると、手話は読み取れません。クラスター、オーバーシュートなどコロナウイルス特有の専門用語について予備知識がないと手話で表現した時に理解できない。

 手話通訳が配置されたことは第一歩。これまで、聞こえない人が見ているという意識なく記者会見をしてきたわけですから、これからの課題です。私たちも一緒に考えていかなければいけない。知事会見を見た会員の感想を県に提出しましたし、手話通訳の技術的な問題も通訳者に伝えた。今後、改善されていくと思います。

 ―聴覚障害者がコロナウイルスに感染、または感染の恐れがあった場合の検査、受診時の手話通訳体制についても県に要望しました。

 「手話通訳者の医療機関への派遣は難しい。筆談でお願いしたい」との回答でしたが、筆談だけでは病状や治療方法について十分な情報のやり取りは難しい。文字でのコミュニケーションが難しい障害者もいる。初めから「手話通訳は無理」ではなく、テレビ会議システムやビデオチャットを使った遠隔手話通訳など、どんな手段が可能か検討してほしい。

 そもそも障害者総合支援法の中に依頼を受けたら市町村が手話通訳を派遣するという公の制度が位置付けられている。コロナウイルス感染症の場合はどうするのか。私たちも他県の情報を集めているが情報が少なく限界もある。一緒に協議しながら取り組んでほしい。
 (同協会の髙橋健一さんの手話通訳で二人の話を聞き編集しました)=馬場恵



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