2019年
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令和に響く胡堂の愛機 東京の富士レコード社 SP盤に「クレデンザ」蓄音機

2019-08-20

野村胡堂の愛機を動かす園田さん

 紫波町出身の作家、野村胡堂愛用の蓄音機が東京都の富士レコード社で今も活用されている。1926年の米国製「ヴィクトローラ8―30クレデンザ」。1963(昭和38)年の胡堂没後、親交のあった音楽評論家の青木謙幸氏が受け継いだ。青木氏のめいの井東冨二子氏が1981年に富士レコード社を出店する際、SPレコードの試聴用に託された。同社は中古レコードを販売し、SPも取り扱う。往年の名機が鳴らす名盤に、多くの顧客が聞きほれる。

  胡堂は「銭形平次」など文学とともに音楽評論を手掛け、あらえびすのペンネームで活躍した。著書「名曲決定盤」などに収められた膨大なレコードは、胡堂記念館などで後世に役立てられている。蓄音機も高級機に凝っていた。

  富士レコード社営業部長の園田恭弘さんは「クラシックのSPを聞く人の垂涎(すいぜん)の機器だった。誰もがいつか持ちたいと憧れた蓄音機を、胡堂先生は持っていた」と話し、作家の耳の確かさを感じる。

  電気蓄音機ではないので手巻きの機械仕掛け。サウンドボックスの中にジュラルミンの箔(はく)があり、木製のボディーに共鳴し、針がレコードの溝を走り、生演奏さながらの音圧で曲を拾う。人の聴覚に素直な音の波長が力強く、やわらかい。

  レコード針は鉄製が多く、竹製もある。戦時中の物不足で竹製になったというのは俗説。そもそも竹針は欧米も日本の材質が最高と認めていたという。現代のオーディオのように電子的に制御されていないので、持ち主なりのこつで愛用、再生した。

  園田さんは「野村胡堂の名曲決定盤は音楽を聞く上で基本中の基本。収められているSPはLPやCDに復刻されたものが多いが、SPは一発録音されたものを聞く職人芸の世界がある。それを今に伝えるよう役立てたい」と話し、感動は時を超える。

  富士レコード社は東京都千代田区神田神保町古書センター9階(電話03―3264―8546)。



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