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19年末時点 岩手は1874人利用 成年後見制度約20年経過 担い手不足が深刻 市民登用にも課題多く

2020-10-03

市民後見人の報酬の必要性について語る高橋司法書士

 認知症などで判断力が低下した高齢者の財産や権利を守る「成年後見制度」の運用開始から、約20年たった。岩手の利用者数は1874人(2019年末時点)と、高齢化から対象者が年々増しており、後見人の主要な担い手の司法書士や弁護士などが不足している。専門家以外の「市民後見人」の活用が求められているが、「責任と負担に見合う報酬でなければ増えない」と、成年後見センター・リーガルサポート岩手支部長の高橋正勝司法書士は語る。

 【成年後見とは】

 判断力が低下した高齢者などの財産管理、福祉サービスの契約手続きなどを、本人に代わって家庭裁判所に選任された後見人が行う制度。介護保険制度とともに2000年に導入された。

 後見人は親族が選ばれるケースが多かったが、使い込みや横領などの不正が多発。高額の財産保有者は「後見制度支援信託」を利用するか、専門家を監督人などに置くよう裁判所が進め、不正報告数がぐっと減った。

 【主要な担い手は司法書士】

 現在、後見人は3割が親族、7割が親族以外の専門職。全体に占める専門職別の割合は、司法書士29%、弁護士22%、社会福祉士13%と、司法書士が主要な担い手だ(2019年最高裁事務総局家庭局調査より)。

 しかし、後見人になると、何かあったら24時間365日駆け付ける体制が、利用者が亡くなるか判断能力が回復するまで続くため、県内では司法書士の成年後見人のなり手が、常に不足。岩手支部所属の司法書士は、1人当たり平均10案件抱えている。

 案件を抱え過ぎると対応が手薄になってしまうことと、トラブルを解決し専門家の介入が不要になった対象者も一定数いることから、「トラブル解決後は、(後見人を)専門家から市民後見人にバトンタッチする仕組み作りが必要」と高橋氏は訴える。

 【市民後見人いまだ広がらず】

 市民後見人とは、その名の通り「一般の市民による後見人」。12年4月に老人福祉法改正で、活用が自治体に努力義務化された。

 自治体や関連団体の養成講座などを受講し、制度の知識を得た人が、候補者の名簿に登録される。家庭裁判所から選任されたら、正式な後見人として業務にあたる。

 全国の市民後見人選任数は296人で、岩手は10人にとどまる。盛岡地裁に登録されている候補者数が81人(9月時点)に対し、選任数が少ない理由を高橋氏は「市民後見人の活用は始まったばかり。不測の事態がないよう(裁判所は)専門家に任せた方が安心なのだろう」と推測する。

 【市民後見人に十分な報酬を】

 市民後見人が伸び悩むもう一つの理由は、報酬の不明確さ。民法上、後見人の報酬は裁判所に請求すれば支給されるが、有償か無償かの明確な規定はない。支払い能力がない利用者の場合は報酬なしとなり「ボランティア精神を原則」とする自治体もある。また、年1回の活動報告書だけで報酬を決める方法について「書き方次第になるのでは」と懐疑的な見方もある。

 盛岡市では、12月末までに市民後見人の報酬額を定める予定で、「一般的な市民後見人の報酬と同額にする」考え。報酬が払えない低所得者などは、「市の申し立てで後見人がついた人」に限り、市で助成する。額は月額1・8万~2・8万円。経費を含めると、十分な額とは言い難い。

 「高齢化社会を支える活動。無報酬はありえない」と高橋氏は強調し、「理想だけでは市民後見人は増えない。業務と責任に見合った対価を自治体で確保すべき」と求める。

 「成年後見は、近場の住民同士で支え合って生活していた昔の地域社会にならう制度。人と人との結びつきを強め、高齢社会でインフラ的存在になる。担い手の確保につながる社会的関心も必要だ」と訴えた。



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