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蚊から身を守る動作 宮崎岩大教授ら研究グループが解明 ネコのマタタビ反応 「進化の過程で獲得」 新たな忌避剤開発へ期待

2021-01-21

 「ネコのマタタビ反応」について記者会見する岩手大の宮崎雅雄教授(左)と、修士学生で論文の筆頭著者の上野山怜子さん

 ネコがマタタビの匂いを嗅ぐと、葉に体をすりつけてゴロゴロ転がることは、昔からよく知られている。その反応が、マタタビに含まれる活性物質「ネペタラクトール」を付着させることで、蚊に刺されるのを防ぐものであることが、岩手大農学部の宮崎雅雄教授らのグループの研究で分かった。21日、アメリカ科学振興協会が出版する雑誌「Science Advances」の電子版で公開される。

 宮崎教授は20年近く、ネコが匂いを介して仲間とどうコミュニケーションをとっているかの研究を続けている。

 そんな宮崎教授がネコのマタタビ反応について研究するようになったのは8年前から。この反応に以前から興味を抱いていた名古屋大の西川俊夫教授を、共通の知人から紹介されたのがきっかけだった。

 ネコがマタタビ反応を引き起こす活性物質としては60年以上前、大阪市立大の目(さかん)武雄教授らの研究により、「マタタビラクトン」という複数の化学成分が関係しているとの報告がある。しかし、マタタビラクトン類のうち、どの物質かについては明確でなかった。

 研究グループは、マタタビの葉の抽出物をネコに嗅がせる実験を重ねた結果、その物質が「ネペタラクトール」であることを突き止めた。化学合成したネペタラクトールが染みこんだ濾(ろ)紙をネコの前に出すと、ネコは顔や頭をこすりつけ、床を転がるという典型的な反応を示したという。


マタタビに反応して地面に体をこすりつけるネコ

 この実験は大阪の天王寺動物園や神戸市立王子動物園でも行い、ジャガーやアムールヒョウ、シベリアオオヤマネコなど大型のネコ科動物でも同じ反応を示すことを確認した。

 また、ネペタラクトールが付着したネコの頭などには、蚊があまり寄ってこないことも分かった。宮崎教授が同物質を塗った腕と塗らない腕を同時に、蚊の入った袋の中に入れたところ、塗らない腕だけ蚊に刺された。

 これらの結果から、ネコのマタタビ反応は、蚊を忌避するため、ネペタラクトールを体にすりつけていると結論づけた。宮崎教授は「1千万年以上も前から、ネコ科動物が進化する過程の中で、生存戦略として獲得したメカニズム」と話している。

 蚊はマラリアや日本脳炎などの伝染病を媒介する、人類にとっても危険な害虫であることから、「ネペタラクトールを活用して、新たな蚊の忌避剤の開発を検討したい」としている。

 一方、ネコにマタタビ反応を起こさせたとき、β(ベータ)エンドルフィンの血中濃度が上昇することも分かった。βエンドルフィンは、多幸感にかかわる神経系の一種「μ

(ミュー)オピオイド系」を活性化させる物質。μオピオイド系は鎮痛効果があるため、「(ネペタラクトールの)さまざまな応用展開の可能性が出てきた」と胸を膨らませている。



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