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認知症改善物質を発見 岩手大発ベンチャー「バイオコクーン研究所」 カイコの冬虫夏草から 従来の医薬品超える効果も

2021-01-29

カイコ冬虫夏草から発見したナトリードについて解説する鈴木幸一フェロー

 岩手大発のベンチャー企業、バイオコクーン研究所(首藤拓也社長)=本社盛岡市上田=は28日、岩手大、岩手医大、大阪市立大、九州大との共同研究により、養蚕技術で育成したカイコの冬虫夏草(ハナサナギダケ)から、認知症や老化を改善する世界初の物質「ナトリード」を発見したと発表した。同日付で米国の国際学術誌「PLOS ONE」に掲載された。論文の責任著者で、同研究所の鈴木幸一フェローは「ナトリードは疑いなく、アルツハイマーを含んだ神経疾患の治療のための新しい戦略になる」と力説した。

 同研究所は、2001年創業。これまで、カイコを軸とした多様な研究活動を展開してきた。その中で、養蚕技術で育成したカイコのハナサナギダケから抽出した液体に、脳の記憶や空間学習をつかさどる海馬の回復機能があることを、既に確認していた。その抽出液の中から、13年に特定した新規物資を「ナトリード」と名付けていた。

 今回の研究では、ナトリードが脳内の「神経細胞」と、神経細胞以外の「グリア細胞」に与える影響を調査した。

 その結果、グリア細胞の一種で、脳内で免疫の役割を果たす細胞(ミクログリア)に対する抗炎症作用、同じくグリア細胞の一種で脳内の神経細胞の活動を支える細胞(アストロサイト)の増殖作用、そして神経細胞(ニューロン)の成長促進作用を、同時に果たすことを突き止めた。

 これまで、3種の細胞個々に作用する物質は見つかっていたものの、同時に有効な効果を与える物質は見つかっておらず、ナトリードが世界初の物質となった。


養蚕技術で育成したカイコのハナサナギダケ

 マウスにナトリードを経口投与する実験では、脳機能のうちの空間認識能力の改善と毛髪の若返りが確認されていた。

 また、同研究所が製造するハナサナギダケの抽出液体を基にした健康食品は、従来の認知症などに対する医薬品を超える効果を見せているという。今回の原因物質特定と原理の解明により、製品の効果が裏付けされた形となる。

 鈴木フェローは「日本発、岩手発の物質。今後は世界中の有力な研究者とチームを組んで、私たちが解明した以外のメカニズム、社会的意義を考え、科学的価値を高めていきたい」と意気込んだ。

 ナトリードは、エスペラント語の「自然」と「子ども、子孫」と合わせた合成語。名付け親となった宮沢賢治学会の佐藤隆一副代表理事は「岩手の大地で生まれた意味合いを込めて名付けた。イーハトーブが岩手を代表する言葉として普及しているが、ナトリードも岩手を代表する言葉になれば」と期待を込めた。



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