2021年
4月24日(土)

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言葉の深さ知って 佐藤智一校長 祖父から受け継いだ書を桜城小に寄贈へ 高村光太郎の「詩魂萬機」

2021-02-24

 高村光太郎書「詩魂萬機」と佐藤智一校長。手前は光太郎に揮毫を依頼した佐藤憲政第6代校長の写真

 盛岡市立桜城小(児童356人)の佐藤智一校長(60)は、祖父で同校第6代校長の故・佐藤憲政さんから受け継いだ高村光太郎(1883~1956)の書「詩魂萬機」を同校に寄贈する。1950(昭和25)年冬、当時大慈寺小校長だった憲政さんが、花巻市太田(当時・稗貫郡太田村山口)の山荘に暮らしていた光太郎を訪ね、揮毫(きごう)してもらった。盛岡市内の自宅に70年ほど保管していたが、佐藤校長が3月の定年退職を前に寄贈することに。「子どもたちには、高村光太郎の言葉を通じてたくさんの詩に親しみ、言葉の深さを味わってほしい」と願う。

 憲政さんは1895(明治28)年生まれ。岩手師範学校本科(現岩手大教育学部)卒。戦中から戦後の42~46(昭和17~21)年度に桜城小校長を務めた。同小は憲政さん、佐藤校長の母校で、佐藤校長の祖母のフヨさんも教員として勤めた。同校が国語教育に重点をおいていることから、「お世話になった学校の教育に役立つことができれば、祖父も喜んでくれると思う」と感謝の気持ちを託した。

 「詩魂萬機」の書は、細身の筆を執って彫り付けるように書かれている。

 「詩魂」は、「詩をつくる心、詩で表現しようとする心」の意があるが、書に添えられた研究者の北川太一さん(故人)の記によると、「詩魂萬機」は光太郎の造語で、その世界観を表白するもの。「これを揮毫せる他例を知らない」とも記されている。

 光太郎の「彫刻十箇條」(1926・大正15年)の冒頭には、「彫刻の本性は立體感にあり。しかも彫刻のいのちは詩魂にあり。」との一文がある。

 佐藤校長は「この書を通じて〝詩魂〟という言葉を知ったが、物事の本質を極めようとする心や、そこから得られる感動という解釈もできると感じた。子どもたちには物事を深く掘り下げ、『本物とは何か』を考える心を持ってほしい」と語った。

 佐藤校長の自宅には、山荘で訪問を受けた光太郎が後日、憲政さんに宛てて書いた書簡も残っており、再訪を願うような文面に二人の温かな出会いがにじむ。

 書は佐藤校長が全校児童に紹介した。

 3月11日まで校長室前に展示し、来校した保護者らにも公開する予定。



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