2021年
4月23日(金)

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内陸発 震災10年 「どん底からでも夢持って」 「やらねば」と奮闘の日々 大槌から盛岡へ 阿部惠子さん 手ぬぐい制作などで縁つなぐ

2021-03-13

 

工房を飾る大神楽の手ぬぐい。「無理をしないで続けたい」と展望する阿部さん

大神楽や緑に映えるハナオクラ、繊細な花弁のキカラスウリ。盛岡市東山の「工房創(そう)」を、色とりどりの手ぬぐいやTシャツが彩る。

 震災の日、大槌町に暮らしていた元小学校教員の阿部惠子さん(77)は仕事のため、夫の節郎さん(80)と盛岡市を訪れていた。津波で自宅を失い、安渡大神楽の道具も流出。落ち込む仲間を見て、「郷土芸能は、町の活性化のもと。何かできないか」と始めたのが型染めの手ぬぐい制作だった。

 取り組みは報道により全国に知られ、収益で山車用の倉庫を建てる目標を達成。補助を受けて道具をそろえ、2012年に安渡大神楽は復活した。その後も盛岡での生活の生きがいとして制作を継続している。

 大槌町の「童謡を歌う会」会長を務め、つながりを持ち続ける。 昨年7月には、同町に県内の童謡団体が集う会を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大で延期に。さらに、感染が落ち着くまで活動休止を余儀なくされてしまう。

 震災の経験を伝える語り部の活動も、昨年は中止が相次いだ。それでも、「何もなくなっても、どん底からはい上がってここまできた。困ったことがあっても、夢を持って頑張っていれば、神様が拾ってくれると、若い人にも、大人にも伝えたい」と思いを強める。
 震災後の10年を「人生の試練だった」と振り返る。自宅のあった場所には海水が入り、カモメが飛んでいた光景を思い出す。「そこから『やらねば』と奮起した。過ぎ去ってしまうと、10年もたったのかと思う」。

 最近は、自宅に眠る服などを生かして、おしゃれによみがえらせるリメークに取り組んでいる。「あるものを生かすことも必要。年齢を考え、残される人が安心して暮らせるよう、いままでのことのまとめも考えている。隣近所との助け合いも大切に、自分のできる範囲で生活していけたら」と、穏やかにこの先を見据えた。
(相原礼以奈)



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