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夏鳥の子育てで支える岩手の環境 チゴハヤブサ 近年減少のおそれ 県レッドデータブック改訂も 県博の高橋さん指摘

2021-08-11

チゴハヤブサ(日本野鳥の会もりおか・安藤泰彦さん撮影)

 北海道や東北地方で繁殖するチゴハヤブサは、丸い顔とオレンジ色の下腹部の愛らしい見た目で、「ハヤブサ界のアイドル」ともいわれる。本県中央部の平地でよく見られる夏鳥だったが、近年は減少を危惧する声も上がっている。2020年度から本県のチゴハサブサの調査にあたる県立博物館専門学芸調査員の高橋雅雄さん(38)は、今後の調査によっては県のレッドデータブックの上位ランクへの区分変更も考えられるとする。「人間の社会状況の変化は、野生生物に巨大なインパクトを与える。岩手には、全国的にも珍しくなってきた屋敷林のある田園風景がたくさん残っており、チゴハヤブサから地域の環境を見直すこともできるのでは」と話す。

 チゴハヤブサはハヤブサ目ハヤブサ科の鳥で、全長32~37㌢ほど。5月ころにやってきて花巻、盛岡周辺や県北部の平地にある神社、寺の林、農家の屋敷林に営巣。高い木にあるカラスの古巣を利用して子育てをする。

 つがいの存在は、「キイキイキイ」と甲高い鳴き声が手掛かりになる。7月中旬~下旬に卵からかえったひなはお盆過ぎに大きくなり、9月まで飛ぶ練習をして海外に飛び立っていく。

 本県のレッドデータブックでは、「優れた自然環境の指標となる種」「岩手県を南限または北限とする種」などを掲載する「Dランク」に該当。環境省が絶滅危惧種を掲載しているレッドリスト(本県のA~Cランクに該当)には掲載されていない。


県立博物館に展示されているチゴハヤブサの?製を紹介する高橋雅雄専門学芸調査員

 野生動物のつがいの数をデータ化することは非常に難しく、高橋さんが20年に営巣を確認したエリアを回って調査したところ、7月14日時点では昨年(約10巣)の半分ほどしかつがいの存在を確認できず、巣の場所が分かっているのは1カ所にとどまっている。

 「ひなが大きくなって餌が必要になるお盆にかけて、親の動きが活発になり、鳴き声も聞こえてくるので、調査はこれからが正念場」と気を張る。

 高橋さんは八戸市出身。弘前大農学生命科学部研究員として、17年から青森県内のチゴハヤブサの生息状況を調査。同県内の野鳥愛好家の報告と照らし合わせ、この10年くらいで半減していると推測。秋田県内での調査を経て、岩手県立博物館の学芸員になった20年度から岩手での調査を開始した。日本野鳥の会もりおかの会員から情報を得ている。

 チゴハヤブサは、以前は北海道でしか見られず、1954年に東北で初めて確認されたのが本県の二戸市。県内第2号が盛岡市の都南地域の神社で80年に見つかり、その後県内で広く見られるようになった。田んぼなど開けた場所にある木立を好むチゴハヤブサにとって、子育ての環境に適していたようだ。

 高橋さんは「鳥類学としては、生き物の分布の変化は興味深いところではあるが、保全の観点から考えると、チゴハヤブサは、(餌となる)小鳥やトンボなど身近な生き物の量がないと生きていけない。全国的に赤とんぼが減っていると言われるが、チゴハヤブサは自然の健全性が如実に表れる鳥」とし、「鳴き声などでチゴハヤブサの存在に気付いたら大切に見守り、ぜひ情報を寄せてほしい」と呼び掛けている。

 「いわてレッドデータブック」(2014年版)は24年度の改訂版作成・公表を目指して、20年度から調査が実施され、国のカテゴリー区分に準拠する方針。現行でチゴハヤブサなどが掲載されているDランクについても引き続き留意していく。



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