2021年
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地名から歴史、精神に思いはせ 八幡平市の菅原進さん 49歳からの研究成果1冊に 「アィヌ語系地名総覧」を出版

2021-09-16

「アィヌ語系地名総覧」を出版した菅原進さん

 八幡平市松尾寄木の元中学校教員、菅原進さん(96)が長年のアイヌ語系地名研究の集大成として「アィヌ語系地名総覧 青森から沖縄まで」(ツーワンライフ刊)を出版した。49歳から研究するアイヌ語地名1280語を青森県、秋田県、岩手県、宮城・山形県、福島・新潟県以南、沖縄県の6章にまとめ、序編ではその歴史的意味も解説。アイヌ文化の先進性、いまこそ注目すべき精神に光を当てる。

 菅原さんは、主に社会科教員として教壇に立った。在職中から考古学を趣味とし、課外に生徒たちと土器や石器の出土する畑などを訪ね歩いた。歌手の千昌夫も教え子の一人。「喜んで、参加していた」と懐かしむ。

 そのうちに、アイヌ人が住んでいない場所にもアイヌ語の地名があることに興味を持った。中でも陸中海岸にアイヌ語系らしき古地名が多いことに引かれて希望を出し、田野畑村の中学校に転任。

 田野畑村の浜「ハイペ」の由来は、アイヌ語で「アワビ・群生する・所」を意味する「haype・us・i」の後略「haype」との仮説を立てた。「hay・un・pe」の中略「haype」で「カジキマグロの上あごのような尖り岩」の意味という説もあったが、現地にそういった岩はない。

 地元の人に話を聞くと、「アイコ(=イラクサ)」のことだという。菅原さんは「アイコの浜というのはおかしい。おそらくアワビの浜なのだろう。こういう仮説を立てて、行ってみて合うのがとても面白くてやめられない」と実感を語る。

 退職後は北東北を中心に各地でフィールドワークを行い、アイヌ語地名研究会の研究者らにも支持された。

 同著をまとめる上では苦労もあったが、「アイヌ語地名が夢に出てくる」ほどの執念で編集作業に当たった。

 「苦労は、それが楽しい。私は陸軍の幹部候補生で終戦を迎えた最後の兵隊。そのときの夢は破れたが、軍人の片っ端になれそうなところまで鍛えられ、兵隊魂はいい意味で残っている」と語る。

 序編は「アイヌ語系地名は日本列島の各地に残っている…その事実と歴史的意味」とし、アイヌの人々の歴史をまとめる。「アイヌ人は倭人に搾取された哀れな民族だった。どちらが野蛮で、どちらが文化的であったか。アイヌ民族は素晴らしい人たちだった」と菅原さん。地球上で現在起きている自然破壊と大気汚染に対しても、アイヌ民族の自然との共生の理論に考えさせられるという。

 「みんないま、分かりつつあるけれど、実践できないでいること。アイヌ民族は遡上してきたサケは食べず、自然保護の意味から、聖なる行いである産卵を終えたサケだけを保存食にして食べていた。(この精神を)いまこそ世界の人たちが見習わないといけない」と強調した。

 B5判約800㌻で化粧箱装丁。定価は6000円(税別)。問い合わせはツーワンライフ(電話019―681―8121)へ。



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