2021年
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故・浦田敬三さんの「文庫」整備 県立図書館 本県関連図書など閲覧可能 賢治、啄木の本も多数 先人知る貴重な資料も

2021-10-10

県立図書館の閉架書庫に約2900冊を収蔵した「浦田敬三文庫」

 県立図書館(盛岡市盛岡駅西通、藤岡宏章館長)は、岩手の近代文学の研究に力を注いだ元教員の故・浦田敬三さんの蔵書の一部を受け入れ、「浦田敬三文庫」として整備した。明治以降に出版された本県関連の図書、雑誌など約2900点が利用可能で、故・浦田さんの足跡の一端にも触れることができる。同館主任主査の佐藤奈津子さんは「郷土の研究者である浦田さんを知ってもらうとともに、貴重な郷土資料を活用してもらえれば」と話している。

 浦田さんは1926(大正15)年、紫波町生まれ。法政大学文学部日本文学科卒。宮沢賢治と親交が深かった直木賞作家の森荘已池ら本県の文学者の年譜を手掛けるなど、本県の近代文学研究の基礎づくりに貢献した。

 杜陵高など県内の高校に勤務しながら、79年に岩手近代文庫を設立。国際啄木学会盛岡支部の初代支部長も務めた。2019年3月8日の誕生日に亡くなった。「岩手人名辞典」(藤井茂さんと共著)、「岩手の近代文藝家名鑑」など多数の著書がある。

 「浦田敬三文庫」は個人名を冠した特殊文庫。閉架図書資料のため、郷土資料カウンターに申し込むことで館内で閲覧のみ可能。2873冊の図書、雑誌をそれぞれ一般、郷土関係に分類して整理し、同館が収蔵に力を入れている宮沢賢治、石川啄木の関連図書もリストアップした。

 郷土関係は、図書、雑誌とも浦田さんが取り組んだ文学・人物研究をはじめ、本県の歴史、文化、教育、産業と幅広い。


浦田敬三さんの郷土資料(雑誌)の一部

 県内で発行された雑誌のうち、「新岩手人 第5巻第4号 通算第44号」(1935年4月、新岩手人の会発行)には、言語学者の金田一京助が「私のアイヌ語学の産婆」として原稿を寄せるなど、郷土の先人を知る貴重な資料も数多い。「北方文学創刊号」(1953年4月、北方文学会発行)には、詩人の大坪孝二、藤井逸郎らが投稿し、盛岡出身の画家深沢紅子がカットを描いている。

 文庫一覧(収蔵資料のリスト)は、郷土資料カウンターに置いているほか、同館ホームページでも公開している。

 同文庫の受け入れは、浦田さんが出身地にある紫波町図書館への寄贈を希望していたことから、2017年に石川啄木記念館の森義真館長(68)と紫波町図書館、県立図書館の館長、担当者が盛岡市内の浦田さん宅を訪問。浦田さんと家族の許可を得て書庫内の膨大な数の資料を確認し、数回に分けて搬出した。

 研究者が長年にわたって収集した資料であることと、県内外の図書利用者の利便も考え、県立図書館がまとまった形で収蔵することに。受け入れ業務を経て、20年度に分類、目録作成、資料本体の装備が完了し、今年5月に利用可能になった。

 9月下旬からは、文庫一覧のPDFファイルをホームページでも公開し、研究目的などでも利用しやすくなった。

 啄木記念館では啄木関連の新聞記事のスクラップなど資料を中心に284点を受け入れ、企画展などで活用している。

 浦田さんの資料の受け入れに関わり、文庫開設を心待ちにしていた森館長は「近代文学の研究者の資料が、個人の文庫として受け入れられたことは大きい」と、研究の足跡の活用に期待を寄せる。



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