2021年
11月27日(土)

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怒りと向き合う作品 くどうれいんさん初の創作童話 高校文芸部時代の著作ベース リズムよく物語展開

2021-10-21

くどうれいん作・くりはらたかし絵「プンスカジャム」(福音館書店)

 盛岡市の作家で会社員のくどうれいんさんの初の児童書「プンスカジャム」(くどうれいん作/くりはらたかし絵)が、福音館書店から出版された。「ベーカリーあんぐり号」の中で起こる、おなかも心も満たされる出来事。「怒り」というやっかいな感情をテーマに、若手作家のくどうさんがユーモアたっぷりに描いている。

 くどうさんが高校の文芸部時代に書いた「ベーカリーあんぐり」を基に、新たに紡いだ作品。この2年間でエッセー集、第1歌集、芥川賞候補になった小説「氷柱(つらら)の声」(講談社)などの刊行で注目された作者が、創作童話に遊び心を散りばめ、物語の世界を広げた。

 物語の主人公は小学2年生のハルくん。友達に遊ぶ約束をすっぽかされ、むしゃくしゃして通った帰り道。赤くて丸い形をした、不思議な車を見つける。屋根には大きな煙突、窓ののれんには「あなたのプンスカ、ジャムにします」の言葉。おなかが減っていたハルくんが恐る恐る中に入ると…。

 ベーカリーあんぐり号から漂う香ばしい匂い、車の中にはふわふわのパン。漫画やアニメーションなど幅広い分野で活躍するくりはらさんが、くどうさんの文に寄せて伸びやかな線で描いている。

 「まんつ、まんつ ねまれのす!」と、盛岡の言葉でもある奇妙な呪文を唱える「あぐりさん」とハルくんのやり取りも温かく、リズミカルな言葉で展開していく。

 「怒り」をテーマにしたことについて、くどうさんは「私自身が怒りっぽいので、怒りっぽい自分をどうにかしたい、というのが着想」と明かす。書き進めるうちに、怒りを治めるのではなく、怒りと向き合う物語になったという。

 「怒りは自己責任」「良くない感情」と、おさえ込むのではなく、「自分が本当に怒らなければいけない時に、怒り方が分からなくなっている大人も多いのではないか。反発したり、怒ったりすることそのものが『だめなこと』とされるのはとても危険なこと」と心に据え、「その人がどうして怒っているのか、その背景や事情に耳を傾けられるようでありたい」と、自身とも向き合った。

 福音館創作童話シリーズとして出版。「学級文庫に並んでいた本のような装丁を見て、自分の本もそこに並ぶかもしれないとうれしかった。2年前から着手し、この2年間を見守ってくれていたような作品だけに、より多くの方に届いてほしい」と願う。

 くどうさんは1994年、盛岡市生まれ。著書にエッセー集「うたうおばけ」(書肆侃侃房)、第1歌集「水中で口笛」(左右社)などがある。

 「プンスカジャム」は22×16㌢、64㌻、税込み1210円。



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