2019年
10月17日(木)

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〈体感思観〉 編集局 相原礼以奈 言葉を超えていけ

2019-09-21

 8月4日に開かれた第1回盛岡国際俳句大会を取材した。8月はその他にも、第30回子どもの心を育てる川柳教室、第14回全国高校生短歌大会(短歌甲子園2019)など、文学イベント目白押し。俳句、川柳、短歌の違いはあるものの、詩歌に親しむ幅広い人たちの声を聞き、多くの作品に触れる機会があった。

 教室で掲示されたり、大会でスクリーンに映し出されたりする作品を記録のため撮影するとき、不思議と風景を撮っている気分になる。俳句大会で当日投句の部で大会賞を受けた小笠原文保さん(北上市)の「炎帝を押し退けさんさ入場す」は、あでやかで力強い夕闇の舞い手たちを撮っているような、祭りの熱風を受けるような思いになった。

 事前投句英語部門で特選に輝いたデビー・ストレンジさん(カナダ)の「snowmelt/the wildcrocuses/you loved(雪が解け/あなたが大好きだった/野生のクロッカスが出てくる)」を読み、盛岡市政担当の先輩記者は「亡くなった旦那さんを思い出している句だね」とつぶやいた。作中の「あなた」の性別や読み手との関係は明記されていないが、夫婦の温かな愛情を伝える力がこの短い句にはある。言葉を超えて伝わるものの奥深さを感じた。

 もう一つ、なるほどと思ったのは、ゲストの俳人夏井いつきさんが講演で語った「俳句集団いつき組」の話。俳句集団といっても組織ではなく、実在しているのは組長である夏井さんのみ。「『俳句って楽しい』と思ったら勝手に(組員を)名乗って」とは組長の呼び掛けだ。初心者には敷居の高そうな俳句を個人でも楽しめる趣味に引き寄せ、裾野を広げることにつながっている。

 第1回盛岡国際俳句大会には4歳から99歳までが作品を寄せ、限られた言葉数で自分の思いを表現した。また、小学生が現代社会を鋭く切る川柳を詠んだり、全国各地から集った高校生たちがそれぞれの見ているものや感じていることを短歌に込める姿を見て、誰でも自分だけの「詠めるもの」を持っていると思った。

 盛岡国際俳句大会は、2020年秋に第2回が開かれるという。誰もが気軽に思いを表現できる場、詠む人と読む人が作品を通して互いに何かを得られる場として育っていってくれたらと思う。



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