■ 〈特集盛岡ブランドって何だろう〉座談会 中心市街地はどうなるの
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■都市のスケールメリット
山内 それは都市のスケールメリットと関係ないんですか?たとえば盛岡市は28万人。50万人都市でやるのと、100万人都市でやるのとでは違うでしょ。
中野 それはあります。実はきょう、宮城県のある町に行きました。そこは人口が2万人ちょっと。電車も新幹線もないのに、ショッピングセンターが立ち並んでいるんですよ。ブランド店もちゃんとそろっていて大手がいっぱい進出している。ユニクロも盛岡より先にできたそうです。なぜか。電車もなければ新幹線も走っていないから、逆に客が逃げていかないというんです。郡部の人が集まってきて、商圏は15万人だと。そこに実験的に出店しようと思っています。
人口6万人の白河の店はジャスコのすぐそばなんですが、50万人都市と売り上げはほとんど同じ。一番駄目なのは浅草です。浅草はわたしの売り方がよくないんだと思います。そのまちにあった商品と、構成をもうちょっと考えていかないと。基本的には人の多いところでやった方がいいんですが、小さなまちには小さなまちの売り方がある。
飲食店を開業するためのハウツー本をよく立ち読みするんですが、あれはすべて100万人以上のまちが対象ですね。わたしはいつも思う。10万人以下の本が出せないかな。もっと20万、30万でできる話はないかなと。
山内 そうそうスケールが小さくてもね。
関口 山内さんは欧州で建築の勉強をされ、現在は盛岡で都市計画にも携わってらっしゃるわけですが、日々感じていることはありますか。
山内 欧州というのは、まちがみんな小さいんですね。日本のようにだらだら広がったまちというものはないんです。せいぜい大きくてパリぐらい。ほかへ行くと、本当にもう城郭という感じですから。この中でブランド品というのが、歴史を感じさせるものとしてあるわけですよ。歴史を感じさせないと商売として続けられない。歴史には地域的な特徴がある。ほかの歴史を持ってきて、商売は絶対できませんから。自分の歴史を持って商売をしなければいけない。
中野さんがおっしゃったようにね、じゃじゃ麺(めん)は盛岡の歴史ですよね。これを東京でやろうといっても道化になっちゃう。盛岡はね、閉鎖的なところもありますが、それが逆にいいところでもあるわけです。中野さんのように全国を歩き回っている盛岡人は珍しいんじゃないですか。
関口 スケールメリットとおっしゃっていましたが、都市の規模ということで感じていることはありますか。
山内 わたしは、50万人が一番面白い都市だと思いますね。これより大きくなると隣近所の融和もなくなる。30万人はちょっと息苦しい。50万人がちょうどいいスケールだと思いますが、どうですか。
中野 思い当たるところがあるような気がしますね。
■各地のブランド
関口 南幅さんに、いくつかブランドの事例を紹介していただきましょうか。
南幅 たとえば、これは、清里の父と言われるポール・ラッシュの本なんですが「最善を尽くせ、しかも一流であれ」、「本物であれ」というのが彼の持論です。
関口 本物という言葉は、中野さんもお使いになっていますね。
南幅 清里では、「清里百年計画」を構想し、清里の父ポール・ラッシュの「本物であれ」という言葉を守り、「百年後の清里に何を遺すか」をコンセプトにしていろいろな事業をやっています。たとえば「萌木の村」では、野外劇場みたいな場所に、東京・八王子のバレエ団が毎年、何日か来て一流の舞台を見せる「清里フィールドバレー」を行っています。また、オルゴール館もあるんですが、一つ何億円もするようなオルゴールがあります。世界に一つだけしかないということにこだわってアンティークオルゴールコンサートを開いたりしています。
清里は、最近、若い人にも人気が出て、一流じゃないものもたくさんできてしまったんですけれども、それでも地元の人たちは「一流」ということをきちんと守っていて、一流の職人の方々があえて清里で店を開く。
また、ごくシンプルな地域ブランドの確立例として「四万十ブランド認証事業」。マークがあってシンボライズされています。自然の恵みの中で環境保全を訴えていく。その中で培ってきた自然の農産物、それを「四万十ブランド」としています。
小規模でいえば「小布施」。観光客を誘致するのに、小さくて何もないのがいいんですよ。でも、本物ということで農産物、ここはブドウの産地なので、一流のワインを造っていて、出荷するのではなく、この地に来て、ここの風に当たり、太陽の光を浴びて、その土地を感じながらワインを飲む日を「ハレの日」に設定して、観光客誘致をしています。これは地産地消による小さな町の取り組みです。
地場産品では「甲斐絹座(かいきざ)」の取り組み。こんなにこだわってどうするんだろうとも思ったんですけど、こういったシルクを昔、駒ケ根というところで作っていて、それを復活させようと地場産品の再生に取り組んでいます。これも一つの地域ブランドです。そしてこれがPR用のボックス「KAIKIボックス」なんです。もう残っている織物は手で触ると壊れそうな品物ですが、こうしたものを守り蘇(そ)生し、多くの人に見せながら、これでいろいろな商品を開発していくという取り組みを行っています。
関口 かなり、アクティブでしかも大規模ですね。
南幅 各地域でその特性を生かせば、いろいろなブランド、本物のブランドができていく可能性はあります。
■中心市街地活性化とブランド戦略
関口 三菱総研の鎌形太郎さんという方が話しているんですけれども、地域ブランドを都市でやる場合に、その構成する一番の要素に市街地の活性化があると言うんですね。盛岡の場合も、そこが一番メーンになっていくべきテーマじゃないかなという気がします。中心市街地の活性化に寄与できないような、ブランド戦略は意味がない。むしろ地域ブランドでやるべきなのは、中心市街地の活性化なんじゃないかなと思うんです。
たとえば青森県のパサージュ広場は、まちの中心部に広場を作り、周囲に屋台を作った。そこに入居できるテナント10店舗程度の要件は新規に開業するところだけ。一定の期間が経過したら出ていってもらう。その中から確実に育っているところがあるんだそうです。やはり、売れるところ、売れないところがあり、売れればすごい列になる。盛岡の大通が広場だったらと思います。
中野 実は先日ですね、盛岡駅の地下街の再整備にあたって企画書を作り、フェザンの方に提出した。盛岡の玄関口なのだから、ナショナルブランドとか大手のものはやめて県内から全部集めましょう。できれば麺横町を作りたいと提案した。水車小屋があって、そこでかっぽう着を着たおばちゃんがそばを打ってる、別のところでは頑固そうな親父が冷麺を売る、じゃじゃ麺を作る。ガードレール下にあるような小さな屋台もある。そんな小さな町を作りたかった。いろいろな事情で平凡なものになってしまいましたが、フェザンさんにも「なるべく地元のものを入れましょう」と言っていただいた。しばらくリニューアルはないという状況で、スタッフの方たちに共通認識を持ってもらえたと思います。
だいぶ前になりますが、わんこそばがイマイチなんだったら、おそば屋さんをもっと大切にしましょうよ、という話をしたことがあるんです。町中に立ち食いそば屋を作ろうって。駅構内の立ち食いそば屋もみんな地元の店にして、新幹線を1本遅らせても、立ち食いそば屋に立ち寄ってもらえるように。もっといいまちができてくると思うんですが。
山内 逆に言うと、ブランドは地域にとって神聖なものだから外に出さないほうがいいんじゃないんですか。
中野 わたしは駄目もとで企画を出しますね。浅草に「女将(おかみ)さん会」というのがあって、富永照子さんという、すごい会長さんがいます。その方にかわいがってもらったおかげで今、浅草で店を出しているわけです。
富永さんは69歳だそうですが、そのパワーと情熱をいつも感じて帰ってきます。日本で初めて2階建てバスを走らせたり、サンバカーニバルを開いたり。浅草寺のライトアップも、女将さんの会が中心になってやった。富永さんの口ぐせは「やるったらやる。すぐ行動よ」。市長も民間出身ですから、強いリーダーシップを持って進んでもらいたいなといつも思っています。
関口 今度、盛南地区に第2イオンが出店しますが、今、前潟のSCだけで盛岡の売り上げの15%を占めているんですよね。第2イオンができれば、合わせて30%を占めちゃう。そして、すぐ玉山村には第3のイオンができるんですね。そうなると、大通だけでなく材木町も含めて中心市街地が低下せざるを得ない。大型店に商店街がいかに対抗するかが、盛岡のまちをどうするかって問題になってきていると思うんです。そんな中で今、地域ブランドづくりという形で盛岡の市民が自分たちの持っている財産がどんなものか、もう一度見直し始めたというのは非常に良いことだと思います。その取り組みの中から、何か見つけられたらうれしいのですが。
山内 前から言っているんですが、旧町名の復活をぜひやってもらいたいですね。旧町名には町を語るイメージがありますから。まちづくりの一番のコンセプトとして重要なのはイメージなんです。町名は一つのイメージですから、そこからいろいろな発想とブランドも出てくると思いますね。旧町名復活は大事なことだと思います。
中野 誰も賛成していないのに、いつの間にか現在の町名になってしまいましたもんね、いつの間にか断りもなく。
山内 わたしの知り合いなんかも「俺はコビト町、お前はどこに住んでいるんだ」なんてね。その方が分かりやすい。街路整備する際も、そういうイメージを、そのまま出していけるんですよ。遠野なんかもそうじゃないですか。
南幅 ええ。昔からの名前で…
山内 町が持っている古くからのイメージを生かす。手法とするとすごく楽だと思います。わたしの要望はそれです。
(つづく)
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