2006年 12月30日 (土) 

       

■ 〈自転車びより〉21 斎藤純 道交法改正に疑問

 環境面や「まちづくり」などさまざまな観点から、自転車の利用促進が重視されている一方、自転車のマナー低下、交通違反の増加が深刻な問題となっている。解決に向けて、識者がつくる「自転車対策検討懇談会」が、自転車の安全利用のあり方について警察庁に提言をした。

  その報告書をインターネットで読んだ。

  まず現状の分析がある。昭和53(1978)年、増加する自転車とクルマの交通事故対策のため、自転車の歩道通行を認める特例処置に踏み切った。現在、全国の歩道の44パーセントが自転車通行を認めている。懇談会はこれを〈諸外国においても例外がない〉特異な事例だと認めたうえで、事故は減ったし、日本は道路が狭いにもかかわらず自転車利用者が他国に比べて多いから、仕方がないと結論づけている。

  確かに自転車とクルマの事故は減った。しかし、自転車と歩行者の事故となると、昨年1年間に自転車が歩行者をはねた事故は2576件で、10年前の4.6倍も増えている。自転車が関係した事故全体でも11.3倍の約18万3000件に増え、全交通事故の2割を占めた。

  しかも、自転車は軽車両であり、本来は車道を走るものという基本が失われ、いまでは逆に「自転車は歩道を走るもの」という誤りが堂々とまかり通っている。

  提言では解決策として〈交通管理の観点からは、自転車自体の安全と歩行者等他の交通主体の安全を第一に考えなければならないが、そのために自転車の利用を抑制する方向に進むことのないよう配慮しなければならない〉と大前提を掲げたうえで、実情に則した自転車ルールの明確化と取り締まりの強化、マナー教育の徹底、自転車レーンの設置など自転車の走行環境を整備することを挙げている。

  さらに(ここからが重要なのだが)、

○自転車通行が危険な場合は定められた区間以外であっても歩道の通行を認める。

○自転車が車道を通行することが特に危険な場合は、自転車通行を禁止する。

  すでにお気づきのことと思うが、報告書はよくまとまっているのに、そこから導きだされた結論(提言)には大いに疑問を抱かざるを得ない。上記の提言は、自転車の利用を抑制しないという大前提に果た
してかなっているだろうか。

  しかも、歩行者の立場からすると、現状でも自転車におびえているのに、ますます歩道上に自転車が増えることになる。歩道上での自転車と歩行者の事故が増えていることを指摘しておきながら、これはいったいどういうつもりなのだろう。

  この提言に沿って次の国会に改正(改悪)道交法が提出される。これが通ると、自転車にとっても歩行者にとっても暗黒の時代がやってくることになるだろう。これは実のところ「自転車の安全利用」に名を借りた「クルマ優先道路を推進する案」でしかない。

  (作家、盛岡市在住)

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