2009年 3月 6日 (金)

       

■ 〈お父さん絵本です〉248 岩橋淳 「にいさん Mom Frere」

     
   
     
  19世紀、後期印象派の画家、ゴッホ。現代でこそ炎の画家と呼ばれ、その作品も名作とうたわれていますが、37年の生涯は、不遇でした。孤独、貧窮、そして行き着いた狂気。

  いせひでこさんはオランダ、ベルギー、フランスと何度もゴッホゆかりの地を訪れ、絵本やエッセー、翻訳などの作品にまとめてきました。テーマは、生と死。本作は、唯一心を許した弟との往復書簡に着想を得て、孤高の天才の生涯を追想したものです。

  代表連作「ひまわり」(この花に象徴される「黄」は、ゴッホの愛した南仏の陽光を表すとも)のイメージを基調とした表紙。それをめくると、そのイメージは棺からこぼれ落ちた一輪のひまわりに変わり、場面は曇天下、ゴッホの葬列へと導かれていきます。

  最愛の兄を亡くした弟・テオのモノローグによって振り返られる、共に過ごした少年期。広い麦畑に遊び、ふと姿が見えなくなった兄の姿を追い求めたこと。兄の純粋さが招く挫折、芸術への姿勢、世間との摩擦、結果としての孤独。そして、その昇華のかたちとして産み出された作品。カンバス地に重ねられるゴッホの人生、一場面一場面のイメージ。

  兄の後を追うように世を去った弟の哀切の呼びかけは、いつまでも読者の耳に残ります。

  【今週の絵本】『にいさん Mon Frere』いせひでこ/作、偕成社/刊、1575円(税込み)12歳〜(2008年)

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