2009年 3月 17日 (火)

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉228 八木淳一郎 ガリレオの贈り物その5

 今から400年前の1609年の夏、ガリレオは手作りの望遠鏡を人類史上初めて星空に向けたのでした。月、木星、土星……。その光景を目にしたガリレオの驚きと興奮は、いかばかりだったでしょう。

  ところで、この驚きの体験は、ガリレオ一人のものではないかもしれません。現代の世の中でも、結構多くの人が小中学生のころに望遠鏡を作って、あるいは出来合いのものにしても、遠くの景色にあるいは夜空にレンズを向けて、初めて目にした時の興奮を覚えているのではないでしょうか。

  昭和30年代初頭、盛岡のまちは人口が今の半分ほどで街灯やネオンもあまりなく、裏通りなど夜は真っ暗と言えるほどでした。子供たちは外が暗くなるまで遊びまわり、やがて、ごは〜ん!と大きな声でうちの人に呼ばれてしぶしぶ家に帰る毎日を送っていました。

  ラジオ番組の1丁目1番地や赤銅鈴之助などに家族みんなが真剣に耳を傾けながら夕ご飯を食べ、食べ終わったあとは、行儀が悪いと牛になるぞと怒られながらも遊びの疲れからごろんと横になってぱらぱらめくる少年雑誌。その裏表紙には、100倍の望遠鏡で見たという火星の運河の模様が添えられた小さな望遠鏡の広告が載っています。

  今思えば誇大広告も甚だしいのですが、こんなにも見えるんだ!と、少年たちの夢を膨らませてくれた点では必ずしも罪なことではなかったかもしれません。

  毎日、学校がひけると町内の何十人もの子供たちが自然に集まってきて、チャンバラや陣取りごっこやらを繰り広げる。ちょっとした空き地には紙芝居や飴売りが来たり、白い横断幕を張って「明治天皇と日露戦争」といった映画の上映会を開く、そんな時代−そのようなおおらかな世の中が再び訪れることがこの先あるでしょうか…。

  さて、子供たちのリーダー格の中学生のお兄さんや物作りにたけた叔父に手ほどきを受けながら、町内の眼鏡屋さんから買い求めた小さなレンズキットとボール紙で、どうしてものぞいてみたい一心で少年たちは望遠鏡作りに挑戦します。

  まだ空に青さが残る夏の夕暮れ時、ふと窓の外に目をやると、隣の銭湯の煙突の煙から逃れるようにして満月近いお月様が浮かんでいるではありませんか。目に近いところの小さなレンズをボール紙で止めたその糊付けがまだ乾かないというのに、気がはやる少年は窓のさんを筒先の支えにしてレンズを月に向けるのでした。

  糊が目についてしみるのをこらえながらのぞく月は、たとえピントがしっかり合っていなくても肉眼で見るよりずっとずっと大きくて、まるで少年に微笑んでくれているようでした。

(盛岡天文同好会会員)

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