2009年 3月 24日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉66 及川彩子 「アラビアの入香の道」

     
   
     
  今イタリアで人気の旅といえばアラビア海。エキゾチックなイスラム寺院、砂漠とオアシスに加え、世界有数の大都市ドバイをはじめ、周辺の観光化には目を見張ります。

  私たち家族も、1月その「千夜一夜」ツアーに参加しました。ミラノから空路5時間。

  ドバイ港発の大型客船に乗り、オイルマネーで発展する周辺の国々を1週間で巡るのです。

  最初の訪問地はオマーンの古都ニズワ。砂漠と岩山の間をバスで3時間。ナツメヤシの林に見え隠れする日干し煉瓦の家並み、モスクの尖塔。道行く男性は、長いガウンのような民族服にアラブ帽子〔写真〕。女性は、全身を黒い布で覆っています。同じ時代に生きているとは思えない光景です。

  ニズワに到着すると「イスラムでは女性にカメラを向けてはいけません」と現地のガイドさん。「あんな黒の服が欲しい」という女性たちの要望に応え、案内してくれたのは迷路のような巨大市場でした。

  市場を巡って、真っ先に魅かれたのが店頭に山積みの「乳香」。乳香の木の樹脂を固めた香料です。乳香の木は、荒涼とした大地に適した植物で、ここオマーンが、その名産地だったのです。

  イエスの誕生を祝い、東方の3博士が持ってきた捧げ物の一つと言われ、古代エジプトでは、遺体焼却や医療にも使われました。香の燃焼は熱心、芳香は徳、煙は神の座に届く祈りの象徴で、今でも「神聖な木」と呼ばれています。また、取引された近郊の港は「乳香の道」として世界遺産になっているとガイドさんが教えてくれました。

  初めて手に取る乳香は、蜜色の氷砂糖のようです。ふと店の奥をのぞくと、数人の女性たちが、乳香の粒を素焼きの香炉に入れ、もうもう立ち上る煙を、全身の黒い布をたくし上げて浴びていました。思わず釘付けになった、その陶酔にも似た儀式…。やはり旅は「人の原風景」発見の連続でした。

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします