2009年 4月 11日 (土)

       

■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉103 建石山(たていしやま、660メートル)

     
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  国道106号の川目で、前を走る大型トラックが熊谷砂利採石場に吸いこまれた。削り取られる岩盤を目にすると、私は建石山を思う。中津川と簗川の中間に座す建石山は、盛岡市の山である。

  「春一番は建石山、どう?」と助手席の直さんは笑った。これまで登ることはあっても、山の全体像を見たことがなかったので、私はスケッチのことを思うと気が重かった。しかも、文字からすれば立つではなく「建つ石」と書き、ビルディングのように建つはずだが、その表現に見合う石を観たこともない。建石山はナゾだらけだった。あ〜それなのに私ときたら二つ返事で答えてしまった。「山を見よ、それから建つ石を探せ!の順でいこうよ。」
 
  地図で見当をつけ、私は中津川沿いに綱取ダムを通って元信、銭掛、子貝沢の集落へ車を飛ばした。道は曲がりくねり山座を同定する余裕はなかったが、子貝沢の手前で建石山は突如としてその全容を現した。

  滝ノ沢を渡ってなお進むと、山頂まで常緑樹を植林した建石山の真下に迫ることができる。これまで想い描いていた「石が建つ」情景は、双眼鏡をもってしても発見できなかった。だが、スケッチを済ませたその時、子貝沢のおじさんは何をおもったか、「建った石があるよ。途中に…」と叫んだのである。

  さて次は登る番である。綱取ダムに一旦もどって、県道36号線より盛岡競馬場オーロパークをやりすごし、高畑集落へ向かう。高畑公民館から300メートル先のY字路「北上幹線72」のミニプレートで左の砂利道へ進入。砂利道を1・3キロメートル走って小広いスペースに駐車する。右手の鉄塔工事用に整備された道を20分ばかり登っていくと、鉄塔手前のガードレールの間に登山口がある。振り返れば、岩手山や駒ケ岳、たおやかな志和三山の峰々を、浮世絵に飛び込んだような高い目線で鑑賞できる。

  赤布がつくしっかりした路を行く。建石山の中腹を巻くように進み、やがて左の尾根と平行するようになるので、路からそれ尾根へ数メートルよじ登る。ヒバ植林地の境にある二等三角点を探し当てないと山頂だと気づかない。展望もナシ。

  帰りしな、登りでやり過ごした大石に寄って、私は「建石山」の意味を初めて理解した。石は三段。土台石の上に二段目、その上に三つ目が建つ。ここの石は立つではなく、あくまでも石の建造物さながらに建っていたのだ。

  車まで往路をもどれば全歩程2時間だが、国道106号の採石場側の林道へ下り、高畑一里塚や大倉峠一里塚をたどると倍の時間を費やし、より複雑になる。

(盛岡市在住、版画家)

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