2009年 4月 16日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉4 望月善次 幸四郎の水入の

 幸四郎の水入の場の白ころも、意久の
  まくは白き綾絹
 
  〔現代語訳〕(松本)幸四郎の、「水入の場」〔「助六」〕の白色い衣装よ。(これに対する)意久が巻いているのは、白い綾絹です。

  〔評釈〕「春日哀愁篇」十七首〔『アザリア』第1号〕の三首目。「助六」はご存じの歌舞伎演目。侠客花河戸助六(曾我五郎)は、宝刀友切丸を探すため人の多い吉原に入り、喧嘩を仕掛け相手に刀を抜かして検証する。やがて、友切丸は、恋仲の遊女揚巻に横恋慕する「髭の意久」が持っていることが分かり、意久を斬って友切丸を取り戻す。「水入の場」は、助六が用水おけの中に身を隠すくだり。成田屋(市川團十郎)への配慮から、演者によって外題が変わる。松本幸四郎(高麗屋)の場合は、「助六縁江戸桜」。「幸四郎」、「水入の場」、「意久」と歌舞伎関連の語彙(ごい)を連ねているのは嘉内が歌舞伎通であったことを示し、賢治への演劇的影響が思われる。歌舞伎関連語彙を連ねているだけの作品であるが、嘉内が、そうすることによって一首を構成するだけの力量をこの時点で備えていたことにも注目したい。

  (盛岡大学長)

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