2009年 4月 28日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉8 望月善次 紅塗の高欄の上に

 紅塗の高欄の上に桜散る春の夕となり
  にけらしな
 
  〔現代語訳〕紅く塗った高欄の上に桜が散っています。ああ、春の夕となったのですねぇ。

  〔評釈〕「春日哀愁篇」十七首〔『アザリア』第1号〕の八首目。前に置かれた作品との関係からすれば、芝居の場面と強く重なったものとの読みも可能であるが、以下、一応は、それとは別の世界の作品としての解釈を加えることとする。「高欄」は、「宮殿・社寺・廊下・橋などの、端の反りまがった欄干。」〔『広辞苑』〕。「宮殿・社寺・廊下・橋など」の具体に何を置くかは、(作者の意図は意図して)読者の裁量の範囲となるところ。「けらしな」は、かつては「過去の推量(〜らしい)」を表した助動詞「けらし」の近世以降の用法で「詠嘆」を示すようになったものに助詞「な」が付いたもの。「春の夕となりにけらしな」は常套(とう)句的な用法であり、嘉内が、こうした常套的な表現を用いていることに先ず目が行った。いずれにしても、こうした常套句的なものを用いる場合、その前にどうした語句を配置するかによって一首の結晶度が決まるわけであるが、そうした意味では工夫の余地もあろう。

  (盛岡大学長)

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