2009年 7月 1日 (水)

       

■ 〈清華大学集中講義報告〉3 望月善次 宮沢賢治の魅力

     
  清華大学の象徴の一つである大礼堂(講堂)  
 
清華大学の象徴の一つである大礼堂(講堂)
 
  6月18日(木)の第2回講義は、宮澤賢治に関するものであった。最初に講義を構想した際には、宮澤賢治の生涯を辿りながら、特に、その中学校時代に焦点を当て「人間における〈希望〉の重要さ」について述べるつもりであった。なお、こうした構想の背後には、最近の問題意識でもある、賢治の生涯は「文学に殉じた生涯」であったか、それとも「文学も行った生涯」であったのかというテーマもあり、次に示す試論もある。

  望月善次「(宮澤賢治の生涯)文学者でもあった生涯〜〈挫折からの甦り〉が織り成す未完の人生〜」、(福島泰樹責任編集)『月光』(2009発行予定)。
 
  しかし、1日目の講義における手応えから、徹底的に音読・朗読を前面に出すものへと軌道修正した。
 
  1 挫折と甦りの人生

  年譜〔石川啄木との対比ができるという点から、文化地層研究会編のものを用いた〕によって賢治の生涯をたどりながら、そこにおける大きな挫折としては、次の四つを指摘した。
  @進学の希望のなかった(旧制)中学校時代
  A「死に至る病い(結核)」への予感と将来の進路に悩む盛岡高等農林学校卒業直後
  B「本統(ママ)の百姓」になろうとして思い知らされる「羅須地人協会」時代
  C再起不能の病床
 
     
  〔「雨ニモマケズ」〕の優劣について語る黄海存Program Officer(日本国際交流基金日本文化センター)の講義。パワー・ポイントは三戸淳一(盛岡大学)  
 
〔「雨ニモマケズ」〕の優劣について語る黄海存Program Officer(日本国際交流基金日本文化センター)の講義。
パワー・ポイントは三戸淳一(盛岡大学)
 
  2 導入としての著名作品〔「雨ニモマケズ」〕

  音読・朗読への「導入」として、原版コピーを用いての〔「雨ニモマケズ」〕による解説・音読を行った。(片仮名であることを含めて)賢治自身の文字の力は圧倒的。この有名な作品に題名がついていないことも、一目瞭然であった。

  例の「雨ニモマケズ」論争を踏まえて、「この作品は優れているか否か」が前半のまとめ。出席者から出た意見は「優れている」とする意見であった。
  
  3 〔「同心町の夜明け方」〕と〔「丁丁丁丁丁」〕の力

  講義後半は、〔「同心町の夜明け方」〕(『春と修羅第3集』)と〔「丁丁丁丁丁」〕(「疾中」)との朗読に集約する形のものとした。〔「同心町の夜明け方」〕は、「1」で挙げた挫折の3番目に相当するもの、〔「丁丁丁丁丁」〕は、挫折の4番目に相当する作品だとした。

  〔「同心町の夜明け方」〕では、「われわれ学校を出て来たもの/われわれ町に育ったもの/われわれ月給をとったことのあるもの/それ全体への疑ひや/漠然とした反感ならば/容易にこれは抜き得ない」の部分を強調する朗読を行った。

  〔「丁丁丁丁丁」〕は、賢治を代表する作品の一つだというのが筆者の立場。作品の中に繰り返して現れる「丁」をどう読むかが、朗読の成否を決するものとなろう。

  二つの朗読を通して、改めて賢治詩の持つ作品の力を思ったことを記しておこう。
(盛岡大学学長)

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