2009年 7月 4日 (土)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉34 望月善次 大空におこられに

 大空におこられにけり、つんむりとす
  ましてゆけど、われのおろかさ
 
  〔現代語訳〕大空に怒られてしまいましたよ。私は、(口もきかず)ツンムリと澄まして行きましたが、自分の愚かさは、良く自覚したのです。

  〔評釈〕「大空がまったく晴れておそろしや」三十二首〔『アザリア』第二輯(盛岡高等農林学校アザリア会、大正六年七月十八日)〕の七首目。「つんむり」は、現在の若者たちの間では用いられているが、『広辞苑』などの見出し語にはない語句。評者としては、「黙り(だまり)」の撥音便化した「だんまり」や、「つんと澄ました」などのように冷淡な様子を示す「つんと」とを合わせた語として受け取ることにした。大空から怒られたような気持ちとなり、一方ではふんと思って沈黙しながら、また一方ではその怒られたことを肯定し、自分の愚かさも自覚するという一首。一見おどけた作風の中に、哀愁や人間存在の深みをもうかがわせるものとなっていて、この一連は、『アザリア』中の嘉内作品の頂点をなすものだというのが評者の見解。『アザリア』同人中では、高い技巧を持っていた河本義行などからの高い評価〔「あざりあに表れたセンチメンタリズム」同第三号〕があったのも当然であろう。

  (盛岡大学長)

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