2009年 7月 19日 (日)

       

■ 〈胡堂の父からの手紙〉224 八重嶋勲 新調費送ったが購入しないでいるのではないか

 ■296巻紙 明治42年1月21日付

宛 東京市麹町区飯田町四丁目三丁目 
                日松館
発 岩手縣紫波郡彦部村
前略陰暦之改年又格別、双方無事越年セシコト大慶ニ候、一昨六日金拾円送金セシ筈落収セシナラン、
本年徴兵担当者ヨリ二十歳届目下徴収中ナリ、學校証明書何分取急ギ送付相成度候、
羽織、袴等新調ヲ要スル筈ノ処今頃ハ如何相凌ギ居ルヤ、夜具ノ如キモ新調費昨秋ニ送付セシ筈ナルモ是以テ購入不致居ナラン、
先達テ玉子ノ請求アリタルモ自他共ニ玉子ハ一切無之、最早春期ニ相成タル為メ昨今僅々相見得ル様ニ候、二月上旬迄ニ何程ナリ送付スルコト出来得ルナラン、且ツ目下ハ氷結シテ送付スルコト不能次第ナリ、
旧冬ノ借金払方ニ就テハ大ニ困難セシ、約四百円バカリ金束(策)有リタルモ、秋以来ノ送金百八十円計ノ外中野百円ノ内六十円ヲ払込、井豊百五十円ノ内五十円払込、其他上納金六十五円払込シ、外三十円以内ノ借金、品代ヲ返済シ、平六ノ如キ大借金ハ元利共ニ払込ミ致シ兼、売却スベキ穀類モ悉皆賣尽シ、以降ハ家政費及送金殆ント目的皆無、心痛罷在候、章モ不怠ニ通學致居候、一年生中ニテ優等一、二ノ内ニアリ、
耕次郎ハ日詰町ニテ来ル廿六日即チ旧正月五日ヨリ畜産講習會(遣昨他払学士)出席ノ事ニ致置候、当地ノ気候ハ昨日即チ大寒入ノ日迄積雪普通ノ如クナラス、道路ノ如キハ夏ノ如シ、山野モ二三寸ト云フ位ナリ、然レ共烈寒ナルコト近年ニ粉(稀)ナリ、北上川筋石鳥谷邊野上ノ下迄氷ニテ張切リ二朝位氷上人通行セリ、一昨十九日頃ヨリノ暖気ノ為流レ破氷トナリ、末対岸氷結ノ為メ舟ノ通行ナシ、
米大豆下落セシニハ農家一般ニ困リ居リ候、
彦部学校モ今障子掛立ナク、壁除キ二月上旬ニハ大概出来スルナラン、
 
日詰町舛屋女□□ト廣田庫三婚姻セシ由ナリ
 
最近写真撮リシモノ有之候ハゝ壱枚送付スベシ
 
学校ノ方ハ勿論一年生ナルベシ、当年六月ハ試験受クルコト容易ナルヤ、目下ノ学校ニテ日課如何ナルモノナルヤ、序ニ一報可相成候、
当年ノ三月ハ村長改撰(選)擧ナリ、如何ナルカ、未タ形状不相見得、或ハKノ如キ反対運動シ居ル由、略等相見得候、右用事迄、早々
  一月廿一日      野村長四郎
    野村長一殿
  最近章ノ精書在中送付ス
 
  【解説】「前略、旧暦の改年はまた格別である。双方無事越年したことは大慶である。一昨6日10円送金したので受領したことであろう。

  本年徴兵担当者から20歳届を目下徴収中である。学校証明書を何分取り急ぎ送付するようにせよ。

  羽織、袴等新調を要するだろうが、今頃はいかにしのいでいるや。夜具も新調費を昨秋に送付したがこれも購入しないでいるのではないか。

  先だって鶏卵の請求があったが自家用、買い入れ共に一切ない。最早春期になり、鶏が産卵しない時期で、昨今はわずかしか出てこない。2月上旬までにいかほどか送付することができるであろう。かつ目下は凍ってしまうので送ることができない。

  旧冬の借金払い方については大いに困難した。約400円ばかり金策ができたが、秋以来、長一への送金180円ばかりの外、屋号中野家へ(長一の母の実家)100円の内60円を払い込み、井豊商店(盛岡市肴町)150円の内50円払い込み、その他上納金65円払い込みし、外30円以内の借金、品代を返済し、平六(日詰町の平井酒造店)のような大借金は元利金共に払い込みしかね、売却すべき穀類もことごとく売り尽くし、以後は家政費及び送金の金がほとんど目的が皆無で心痛している。

  章も怠けずに通学している。1年生中優等1、2位の内である。

  耕次郎は日詰町で来る26日即ち旧正月5日から畜産講習会(遣昨他払学士)に出席の事にしておいた。

  当地の気候は昨日即ち大寒入の日まで積雪が普通のようではなく、道路は夏のようで、山野も2、3寸といったくらいである。しかし、烈寒であること近年に稀れである。北上川は石鳥谷辺、野上の下まで氷が張り詰め、2朝位は氷上を人が通行した。一昨19日頃から暖気となって流れ破氷となった。対岸まで氷結したため渡し舟の通行がない。

  米、大豆の価格が下落したので農家は一般に困っている。

  彦部学校も、障子の掛け立てと、壁除き、2月上旬には大概出来るであろう。

  日詰町舛屋女□□と廣田庫三が婚姻したということである。

  最近写真を撮ったものがあったら1枚送るように。

  学校の方はもちろん1年生であろう。当年6月は試験受けることができるだろうか。目下の学校での日課がどうなっているのか、ついでに一報せよ。

  当年の3月は村長改選である。どうなるのか、まだ形状が見えてこない。あるいはKのごときは反対運動をしているとのことが大体見える。右用事まで、早々

  (追伸)

  最近の章の精書(成績書か)を同封する。」という内容。

  年末に400円の金策をし、すべて借金返済に充て、なおかつ、平六酒造店からの大口借金は手付かずに残したという。そして、家族が生活していく費用をどうしようかと、父は心痛しているのである。

  そして、長一が、1学年留年なのか、2学年に進級できたのか、父には分からないのである。

  また、この冬は、雪は少ないものの大寒波で、北上川に氷が張り詰め、2朝、紫波町から石鳥谷町辺りまで、人が氷を渡っていったというから相当の極寒であったことと思う。


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