2009年 7月 23日 (木)

       

■ 〈都市の鼓動〜リレーコラム〉51 竹原明秀 杜の都復活で都市の色を作る

     
   
     
  JR東日本は緑、日本郵便は赤というように企業や団体などの組織にはコーポレートカラーあるいはシンボルカラーがある。組織のイメージやコンセプトを示すことが多く、企業の社風や組織の雰囲気を指す場合もある。われわれの身の回りには看板をはじめとし、製品パッケージ、ユニホーム、ウェブサイトのデザイン、広告など、目にするすべてが企業のシンボルカラーによって満たされているともいえる。

  では、都市の色は存在するのだろうか。街全体が単一もしくは同系色でまとまっている場合、その色は街のカラーともなり、訪れる人々に強い印象や共通のイメージをもたらす場合が多い。色の統一感は、景観を形成する上で好ましいイメージを与えさせ、街全体がある一定の秩序のもとにあることを実感させる。

  街全体が統一された色を待った地域として、地中海沿岸の「白い街」は有名であろう。青い空と紺碧の海に挟まれ、白い壁からなる家並みは多くの観光客を引き寄せ、強い印象を与える。

  この白は石灰岩を主体とした地質やオリーブを生んだ地中海性気候といった地域特有の自然環境に基づくもので、自然との調和の中から生まれた合理性のたまものといえる。

  一方、インドにはピンク・シティと呼ばれるジャイプールやブルー・シティと呼ばれるジョドプールという街があり、人工的に着色された家々や看板、ひいてはその色の商品まである。これは街を支配したマハラジャの命令を起源とするが、現在でも変わらぬ人々の忠誠心がそこに存在する。

  では、わが国の都市の中で統一された色からなる街はあるだろうか。

  思いつくものとして金沢の黒(瓦)、倉敷の白(壁)、岡山県吹屋のベンガラ色(暗い黄みの赤)など、歴史都市や重要伝統的建造物群保存地区などにある。

  金沢の場合、卯辰山から見る東山茶屋街の家々は黒瓦からなり、日光が当たると渋く輝き、その存在感をアピールする。あるいは吹屋を散策すると赤銅色の石州瓦とベンガラ色の外観で統一された家々は、日本では珍しい赤を強く印象づける。両地域を彩る街の色は、江戸末期から明治時代にかけて地域の風土や産業から生じたもので、街の色がそのまま、街のカラーとして現在、通用する。

  さて、盛岡の街には統一された色はあるのであろうか。市内には23件の歴史的建造物が存在するが、いずれもが単発的なもので周囲との色の連続性は認められない。むしろ、特定マンション業者による建物の外壁色が、統一感を出している場合すらある。

  これは企業のカラーが都市を彩り、街が企業に乗っ取られたのではと、疑問を持ってしまう。市では「盛岡ブランドの確立」のために、「お城を中心としたまちづくり」や「街並み景観政策の推進」など、積極的に取り組んでいるという(盛岡市ホームページ「市長からのメッセージ」)。自然環境と風土に見合った街の色を考えていく必要があろう。

  そのヒントになるものとして二つのひし形を直角に交差させた市章がある。その色は緑色である。さらに岩手県の県旗は地色を納戸色(深いブルーグリーン)と定めている。

  つまり、緑色が盛岡市・岩手県のカラーである。これを地域の雰囲気を表すカラーとするのではなく、街の色として積極的に採用するのもひとつの選択肢ではないだろうか。

  ただし、人工的に彩られた緑色は信号の青以外、ほとんど身の回りにない。街の中に杜の都を復活させることが都市の彩りになるのではないだろうか。ちなみに岩手大学のイメージカラーも若草色で緑色であるが、それを知る人はほとんどいない。
(岩手大学人文社会科学部環境生物学教室教授)

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