2009年 7月 25日 (土)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉42 望月善次 大空よ!! これはあんまり

 大空よ!! これはあんまりよそよそ
  し、おやじよ少し、金が欲しいぞ、
 
  〔現代語訳〕(親父にも例えられる)大空よ。これでは、あまりも、よそよそしいじゃぁありませんか(親父でもある大空に向かって、率直に言えば)親父さんよ、私は、少し金が欲しいんですよ。

  〔評釈〕「大空がまったく晴れておそろしや」三十二首〔『アザリア』第二輯(盛岡高等農林学校アザリア会、大正六年七月十八日)〕の十五首目。空に向かって(心の)対話を続けていると、「大空」への親近感は増すばかりである。抽出歌では、ついに、空を父親に見立てて語りかけるところにまで達している。「よそよそし」の内実は、この作品の範囲では、必ずしも断定できないが、前に置かれた「七月の大空だよと、あんまりに、われを怒るな、すごき眼をして、」などから類推して、自分に対して怒ったようにも見える空に対しての感情なのだとすることもできるであろう。それにしても、第四句から結句にかけての「おやじよ少し、金が欲しいぞ、」は、大胆にして意表を突かれる思いのする表現。実生活においては、熱心な神道信者で、農業には関心を示さなかったという父親への、嘉内の(親しみも込めた)案外率直な物言いではなかったのかという〈邪推〉も浮かぼうというものである。
(盛岡大学学長)

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