2009年 9月 1日 (火)

       

■ 〈衆院選岩手で何が〉1 住宅街、候補に駆け寄る有権者

 09年衆院選は民主党が圧勝し、政権交代が実現した。岩手では4小選挙区を民主がすべて勝利し、比例でも本県在住者の1人が当選した。衆参の本県選出国会議員はこの結果9人になるがすべて民主党。与党から転落の自民党は2区で唯一の議席を失い、党勢回復の道は険しい。自公政権への不満は民主の一人勝ちとなり、共産、社民の両党は風に乗れなかった。歴史的な政権選択となった今回の選挙戦を振り返る。

  「今回は前回以上が至上命令です」。選挙期間中の8月21日夜、JA岩手中央飯岡支所で開かれた民主前職の階猛氏の個人演説会。地区後援会幹部が支持者を前にぶち上げた。前回の補選では自民新人候補に2倍差の10万票台を獲得した。県内全選挙区制覇を目指す今回は2区への波及効果を狙った。人員も2区に投入され、階陣営は実質的に2選挙区分の運動を担った。余裕に裏打ちされた「圧倒的勝利」だった。

  選対本部長の佐々木博県議は「うちは運動量が違う」と胸を張る。「補選の時点でいつか解散が起きると臨戦体制だった」と振り返る。07年7月の補選は国会で与野党のねじれを生み、安倍晋三元首相を退陣に追い込んだ参議院選と同日選。

  階氏は当選後も週末になると選挙区内に入り、各地で国政報告をして政権交代の必要性を説いて回った。誰も顔を出さない住宅街の隅々まで入り込んだ。運動の効果は解散風がうわさされた昨年秋以降、出始めた。

  階氏の名前や演説が聞こえると、有権者が玄関口に出て音のする方向を探す。階氏の姿を見かけると近寄っていく。「本当にこんな場所まで来るんだ」。現職の利を生かし、無党派層や自民支持層も取り込むうねりができていた。親せきや知人友人の口コミで選挙区内に伝わっていった。

  選挙が公示されると、作戦は次の段階へ切り替えられた。回る地域の拡大をやめ、1度回った地区などへ深く入り込む。達増知事から引き継いだ地盤以外に階氏自ら新たに立ち上げた後援会地区へ何度も足を運ぶ。

  選挙中に不特定多数が訪れるイベント会場の街頭演説で、見知らぬ有権者が自ら階氏に握手を求めてきた。他候補ではほとんど見られない光景だ。

  党が掲げたマニフェストの中身を丁寧に説き、自公が批判する政策の財源や成長戦略も簡潔に反論する。個人演説会では予定していない支持者の質問攻めにあうことも。

  佐々木県議は「話す内容は論理的で明快。今のままの政治ではダメだとみんなが思っている。その批判の受け皿になった」と分析。自公政権への不満、経済危機にみられる閉そく感、政権交代という「風」を、階氏そのものの評価、陣営の運動量によって受け皿として吸収した。

  階氏自身も「今まで自民支持だったが今回は(民主に)という方が結構いらっしゃった。ずっと民主を支持していて、いよいよ政権交代と今まで以上に熱が入って支持者獲得へ動いてくれたこともある。風と従来からの本県民主の底力の両面があった」と話す。

  今回の圧倒的勝利には補選当選から2年間、来るべき本選への伏線が張られていた。最長といわれる解散から投票まで40日間。階陣営の運動期間はその約20倍にわたった。候補擁立の前から他陣営は既に遅れを取っていた。
(大崎真士)

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