2009年 9月 3日 (木)

       

■ 〈北Gのライブトーク〉103 北島貞紀 もしもし亀さんよ

  散策の途中で、珍しいものに出会った。家の前で甲羅干しをしている、亀の親子だ。本当に親子かどうかは知らないが、親らしき大きさの亀が2匹(という数え方でいいのか)と、その3分の1位の大きさの子亀が2匹、深さ20aくらいのプラスチックの容器に入れられていた。

  2匹の親亀は、全く動かずにじっとしている。子亀の片方は、もぞもぞとうごめいている。

  そして元気の良い末っ子の亀が、無謀なチャレンジを繰り返していた。少し末広になっている容器の壁をよじ登っては、すべり落ちる。何度も何度も、登ってはすべり落ちる。

  ずっと見ているわけにもいかないので、その場を離れたが、少し気分が沈んだ。

  あの亀は、永遠に同じ動作を繰り返す。壁を乗り越えて、下界に出たいのだ。しかし、決して壁を越えることはできない。親亀は、その挑戦が無駄なことを知っている。自分たちも、かつては下界を夢見て壁を登ったのだ。

  もし、奇跡が起きて、彼が、あの壁を越えたとしたらどうだろう?夢見た下界は、バラ色だろうか?いやいや、そうではない。

  「飢えと寒さと孤独!」今までは天(飼い主)から与えられた食べ物、飲み物に汲々とする。なんたって箱入り息子だったのだ、そう簡単に野生化できないのだ。

  そして、2度ともとの世界に戻ることはできない。そこは家族がいて、退屈だが、安心と安全が保障された場所だった。今は自分の同胞が存在しない世界、無人島に漂流したロビンソン・クルーソーのような孤独を味わうのだ。

  それでも彼は、求めてやまない自由を得て、幸せなのかもしれない。

  もしかすると、彼には目的などなく、何も求めていないのかもしれない。

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