2009年 9月 5日 (土)

       

■ 「国際的受信力を高めよ」 新渡戸国際塾で明石元国連事務次長が語る

     
  新渡戸国際塾で講演する明石康元国連事務次長(左)、隣は谷口誠前県立大学長  
  新渡戸国際塾で講演する明石康元国連事務次長(左)、隣は谷口誠前県立大学長  
  本県から世界で活躍する人材を育てようと、谷口誠前県立大学長が提唱し、企画された新渡戸国際塾(同実行委員会の主催)が4日、3日間の日程で滝沢村の岩手山青少年交流の家で開幕した。県内外の大学生や企業人ら73人が参加。国際問題に詳しい講師陣から外交や金融など多岐にわたる講義を受け、グローバル時代の日本の将来について討議する。初日は明石康元国連事務次長が「変動する世界と低迷する日本」と題して講演。国際社会で果たすべき日本の役割や政権交代後の外交、経済などについて論議を深めた。

 明石氏は、日本は豊かさに埋もれ、内向きになっていると問題提起。米国のサブ・プライムローン問題に端を発した経済危機を例に「グローバル化から逃げることはできず、いかにグローバル化のマイナス面を減らし、プラス面を拡大していくかが今日的な課題」と指摘した。発展途上国に対する自発的な協力はもちろん、国際問題への外交的な寄与など、日本の責任ある行動が求められると説いた。

  「日本は発信力を強めなければいけないと言われるが、むしろ強めなければいけないのは受信力」と強調。「国民一人ひとりがアンテナを張り、世界の国が何に悩み、何を求め、何を夢見ているのかを考え、みんなに望まれるような活動を展開すべき。内向きになっているわが国の流れを変えるのは、皆さんだ」と期待した。

  受講者との質疑応答では、自衛隊の国連平和維持活動(PKO)参加や核の抑止力などについても話題に上り、明石氏は「自衛隊はPKOに積極的に参加すべき」と持論を展開した。

  「戦力を保持しない」という日本独自の外交姿勢は貫けないかとの受講者の質問に対しては「日本が軍国主義を反省し平和主義に転換したことは正しいが、北東アジアの現状は平和とはほど遠い」と指摘。永世中立国のスイスなどを例に「国民一人ひとりが自衛の意思を表明することが戦争の抑止にもつながる。持つべき最低限の戦力がどの程度なのかは国民が議論を尽くすべき」と述べ、安全保障に対する意識を高めていく必要性を語った。

  さらに、「国際人」という人種はなく、国際活動で求められるのは「日本人としてのアイデンティティー。文化や伝統を血肉として蓄えること」と主張。「他国のアイデンティティーも否定せず、互いに尊敬し、学び合い、喜び合う心の広さが大事。近代日本がアジアにおいてどういう行動を取ったか冷静に語り合える知識を持ち、自己弁護ではなく、互いの相互作用を考えていくべきだ」と述べた。

  3日間の研修では元OCD事務次長の谷口氏のほか、唐沢敬立命館大名誉教授や木下俊彦早稲田大アジア太平洋研究センター教授、加藤章元盛岡大学長ら10人が講義を担当。グループに分かれての討議や研究発表会も予定されている。

  受講者の県立大総合政策学部4年の小方恵実さん(22)は「普段は農村について学んでいるが、地元の農業であっても貿易やエネルギーなど世界とかかわっている。内向きの研究だけではなく、外に向けて何を発信していくべきか学びたい」。盛岡市の会社員佐々木高仁さん(38)は「講義も楽しみだが、参加者から刺激を受けたい。さまざまな切り口から世界を学び、未来のリーダーを育てたいという国際塾の趣旨に共感した」と意欲を燃やしていた。

  谷口氏は「アメリカにも中国にも負けないガッツのある人材が岩手から巣立ってほしい。岩手にはそれだけの人材を出してきた風土がある。1回で終わらせず、さらに発展させたい」と呼び掛けていた。

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