2009年 9月 6日 (日)

       

■ 〈胡堂の父からの手紙〉230 八重嶋勲 近日中に退校処分の通知あらん

 ■303半紙 明治42年3月28日付

宛 東京市麹町区飯田町四丁目三十一、
発 岩手縣紫波郡彦部村大字大巻

前畧送金之件ニ付種々苦慮致居候得共、如何共為シ不能、嘸困難シ居リナラント推察致居候、殊ニ受業料未納ノ為メ本日近日中退校處分ノ通知相成、加之徴兵猶豫ニ関スル在学証明証至急要スル次第ニ候、就テ今明日何ナリ共担保トシ弐拾円モ送金可致ニ付第一授業料ヲ納メ、在学証明書至急送付相成度候、容(数)年来送金ノ多額ノ為メ借金相嵩ミ殊ニ村長満期ノ為メ役場ノ方モ尻片付不致トモハ一ノ事故トナルノ慮リ(レ)アリ、旁々今執行命令ニ相成ラントスルモノ一二アリ困難実ニ如斯場合ニ遭遇ニ罹リタルコト曽テ無之、推察被下度、出来得ル限リ心労為致度(無)罷在候得共如何共為シ(ス)ニ術無之候、
村長再選モ野上ノ應援アリ、来月末頃ニ執行ノ手續ナルカ八九分通案(安)心ナルモノゝ如シ、
章モ今回ノ修業ニテ第一位ノ成蹟(績)良好ニテ一年生四十二人ノ惣(総)代トシテ修結(了)証書ヲ受ケ大ニ喜ヒ居候、
手紙モ書ク気カナク残念ニ存候、右用事迄、早々
   三月廿八日     野村長四郎
     野村長一殿
 
  【解説】「前略、送金の件について種々苦慮しているが、どうすることも出来ない。さぞ困難しているだろうと推察している。ことに受業料未納のために、近日中に退校処分の通知があることとなり、これに加えて徴兵猶予に関する在学証明証が至急必要である。ついては今明日に何なりを担保として20円ばかりも送金するので、まず第一番に授業料を納め、在学証明書をもらって至急送付すること。数年来の送金が多額のため借金がかさみ、ことに村長の任期が満期のため役場の方も片付けなければ一つの事故となる恐れがある。あれこれ今執行命令になろうとしているものも1、2あり、困難している。

  実にこのような場面に遭遇したことはかつてない。推察して欲しい。長一に、出来るかぎり心労させたくないと思うが、どうする術もない。

  村長再選も屋号野上の応援があるので、来月末頃に執行の手続きとなるが、8、9分通り、安心できるようである。

  章も今回の1年の修業で第1位の成績良好で、1年生42人の総代として修了証書を受け大いに喜んでいる。

  手紙も書く気カがなく残念に思う。右用事まで、早々」という内容。

  授業料分の送金すらできないほど金策に困難を極め、したがって、授業料未納で退学処分の通知が近日中にくる。加えて徴兵猶予の手続きに大学の在学証明書を提出をしなければならない、という、にっちもさっちもゆかない状態で、これまでこのような場面に窮したことがなかった。そして村長の改選時期が近づいているのである。それでも、長一に対し「出来得ル限リ心労為致度無罷在候得共如何共為スニ術無之候」である。

  そして筆まめな父も「手紙モ書ク気カナク残念ニ存候」と消沈し力がない。


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