2009年 9月 7日 (月)

       

■ 世界で活躍する人材を 新渡戸塾、3日間の日程を終える

     
  21世紀の日本とアジアの進路について意見を交わした講師陣によるパネル討議  
 
21世紀の日本とアジアの進路について意見を交わした
講師陣によるパネル討議
 

 本県から世界で活躍する人材を育てようと、谷口誠前県立大学長の呼び掛けで滝沢村で開かれた新渡戸国際塾(同実行委員会の主催)は6日、3日間の日程を終え閉幕した。最終日は塾長の谷口氏の基調講演や講師陣によるパネル討議、受講者によるグループごとの発表が行われた。県内外から集まった10代から70代までの受講生73人が熱心に議論し、互いの成長を誓いあった。

  谷口氏は「21世紀の日本とアジアの進路|新渡戸を生んだ岩手から」と題して基調講演。ASEANに日、中、韓を加えた「東アジア共同体」の必要性を説いた。利潤優先の投資家に脇を固められた米国型資本主義の世界経済秩序の下では「いつでもどこでも金融危機が起こる可能性がある」と指摘。「アジアが国際社会においてアイデンティティーを高め、存在感を増し、その実力に応じた発言力を持つようになることが、よりバランスの取れた新しい世界秩序の構築につながる」と訴えた。

  分担金による加重投票制を取っているIMF(国際通貨基金)や世界銀行では、米国が重要事項に対し最大の投票権を持つ。しかし、中国人民銀行総裁が3月のG20サミットに先立ってIMF改革を求める論文を発表するなど新しい秩序を目指したアジア主導の兆候も現れ始めているという。

  谷口氏は日本にとっての最大の課題は中国、韓国との関係改善と指摘。特に東アジア共同体成立の成否を握っているのは日本と中国とし、「日本が本当にアジアの最先進国であるのならば、中国との間に不毛なナショナリズムに基づく覇権争いを繰り返すべきではなく、ともにアジア、世界の大国として矜持(きょうじ)ある対応をすべきだ」と述べた。

  基調講演に続くパネル討議では「21世紀をアジアの世紀とするためには、アジア以外の諸国が、アジアに学びたいと思うような哲学や理念を構築することが求められる。紛争や民族問題の解決方法、地球環境問題への対応など政策として具体的に示す必要がある」(唐沢敬立命館大名誉教授)、「EUの設立には50年を有したが、自由化が進んだ現代ではもっと早く共同体を作ることが可能。北東アジアの平和と繁栄という目的をきっちり抑え、互いの信頼を醸成していくこと。歴史認識の共有化をさらに進めなければいけない」(千葉康弘河北師範大客員教授)といった意見が出た。

  受講生によるグループ発表では、国際経験豊かな9人の講師を囲んで議論を深めた成果を披露。日・米・中の関係構築における日本の果たすべき役割や日韓の歴史教育問題、発展途上国と先進国がともに持続可能な社会を構築していくためのプロセスなどについて発表があった。

  研修を終えた県立大総合政策学部2年の山下雄大さん(19)は「面白かった。さまざまな考えに触れ、どうしてそうなるのか掘り下げることによって、また新たな考えも浮かんできた。自分の小ささも実感したのでさらに努力したい」。早稲田大法学部2年の大澤有砂さん(19)は「幅広い年齢層の方と議論でき刺激になった。東アジア共同体の課題やメリット、デメリットについても考えさせられた。将来は国際問題に携わっていきたい」と意欲を燃やしていた。

  上海出身の岩手大農学部4年の張冲天さん(25)は「岩手や日本、アジアだけではなく国際的な視野を持つことが重要だと感じた。特に若い世代が互いの国を実際に見た上で、議論し理解を深めていくことが大事だ」と話した。
(馬場恵)


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