2009年 9月 8日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉60 望月善次 秋風の節理の面の

 秋風の節理の面の 冷めたさに たゞ
  はるばると野のなかの川
 
  〔現代語訳〕秋風が吹いている節理の面の冷たさに(対するように)、ただ遠く遠く野の中の川が流れています。

  〔評釈〕「秋風節理」(署名 陸奥のおのこ)四首〔『アザリア』第三輯(盛岡高農アザリア会、大正六年十月十七日)〕の冒頭歌。「陸奥のおのこ」は嘉内だと言われている〔『新校本宮澤賢治全集』〕。「節理」の意味の確定にはやや苦戦した。「節理」には「@物の表面のあや。A物事のすじみち。B岩石、特に火成岩に見られるやや規則的な割れ目。」〔『広辞苑』〕があるが、抽出歌ではBの意味だとした。「秋風節理」の一連が、話者による客観描写的な作品だと読んだからである。従って、題名「秋風節理」も「秋風が吹いている節理」なのだとした(一連の作品から、「節理」の他の意味を消し切るのは無理であることは自覚している。)。初句からの「秋風の節理の面の 冷めたさに」と「たゞはるばると野のなかの川」の意味的連関も他の可能性がないわけではないが、ここで特定した意味を前提にした「秋風の吹く節理」と「野のなかの川」の対比もなかなか悪くないものだと読んだ。
(盛岡大学学長)

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