2009年 9月 10日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉61 望月善次 どろの木に秋風立ちて

 どろの木に秋風立ちて斑晶の 樹上の
  葉と葉 揺るぎてやまず
 
  〔現代語訳〕ドロノキに秋風がはっきりと吹いて、「斑晶」のような樹上の葉と葉も揺れてやまないのです。

  〔評釈〕「秋風節理」(署名 陸奥のおのこ)四首〔『アザリア』第三輯(盛岡高農アザリア会、大正六年十月十七日)〕の二首目。「斑晶」は「岩石の組織を表す『斑状組織』(大きい結晶が細粒結晶集合中またはガラス中に散在するものうちの前者。徐冷中に成長したもの。)〔『マイ・ペディア』〕なお、『アザリア』においては「班晶」と誤記されている。秋風が吹いている木々の葉を「斑晶」に喩(たと)えているところなどは、いかにも農芸化学を専門とする「農科第二部」の学生である。宮澤賢治における自然科学的語彙(ごい)は、賢治を、主に文科系の学問やエートスを基盤とする多くの文学者から際だてる特徴となっているが、既に言及していることでもあるが、嘉内もそうした一面を持っていたことは注目しておいて良いことだろう。嘉内はそうした面のみでなく、「秋風立ちて」や「揺るぎてやまず」のように、一般的な意味における「文学的・短歌的素養」も併せ持っていたことも指摘しておこう。
  (盛岡大学学長) 

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします