2009年 9月 13日 (日)

       

■ 〈胡堂の父からの手紙〉231 八重嶋勲 夏季休業までの学費を心痛する

 ■304半紙 明治42年4月7日付

宛 東京市麹町区飯田町四丁目三十一、
               日松館内
発 岩手縣紫波郡彦部村
前畧昨六日金弐拾円送金セシ筈定メテ受領セシナラン、豫メ承知之事ナラン、徴兵猶豫ニ関スル在学(証明)書大至急送付アルベシ、調書証ハ四月十五日限リニ候得共本縣ノ制裁トシテ四月十日限リ必ラ郡ニ提出スヘキモノニ候、若シ期間ヲ後ルゝトキハ先入兵トシテ徴収(兵)セラルヘキモノニ候、乍操言大至急校長ノ証明スル在学書証送付可致候、
来ル六月夏期休業迄ノ学費ノ金員ニ付今よリ心痛罷在候、如何シテ送金スヘキヤ
出来得ル限リ苦學生トナリ節険(倹)セラレ度候、
此間大巻金矢ノ富哉ナルモノ盛岡懸立農学校獣醫入学之処今回ニテ二回落第ニ落胆ノ余リ上京セシ様子ナリ、或ハ其ノ許ヲ尋ネ又ハ柏屋ノ花子サンヲ頼ミニ上京セシ様ナリ、東京ニ入学スルコトハ父母モ諾シ何分地方ニ面目ナキト考フルヨリ出テタル由ニ候得共、懇切ニ世話シ兄弟ノ様ニ恩義ヲ與フル上ニ於テ父治郎ナルモノ是迄Hニ悉心シテ万事ニ拙者トハ反対ノ意志ニアルモノナレトモ或ハ野村ニ敵意ヲ表スルハ実際ニ於テ不利ナリ、人ノ反簡(間)ニ乗リタルコトヲ目下略等語リ居ル様子ナレバ、今回(来ル五月五日頃)村長選挙ニモ利スル処アルベシ、能々注意セラレ度候、
今回送金セシハ昨今種々ノ支出ニ用シ、第一農銀ノ払込金弐拾一円、地粗第五キ十六円、先達テヨリノ五十円請求都合九十弐円、外平六ヨリ四百円借金ニ対シ、昨年二月以来ノ利子未払ノ為メ第五期上納金平六分切符計リニテ被差向トモ、金五十円ハ昨年三月野村豊治ヨリ百五十円借用セシモノハ、今ヤ野(村)豊治モ不如意ノ形状ヲ来シ、突然督促セラレ、是等ハ差置キ前九十弐円ニ対シ作山金太郎ヨリ金三十円借受ケ其金ヲ先達テ送金セリ、上納金ニ中村謙三ヨリ拾円借受ケ、残金困難シ居ル場合昨日ノ朝中野ノ叔父様五十円持来リ救助セラレタリ、直チニ農銀払込金ト弐十円其許ニ送金スルコト得タリ、是又直チニ其許よリ礼状直接ニ送付相成可成候、
外学校ノ目下ノ状況及其他ノ事柄詳細被調至急報導相成度候、右用事迄、早々
     四月七日       野村長四郎
     野村長一殿
 
  【解説】「前略、昨6日、20円送金したのできっと受領したことであろう。あらかじめ承知のことであろう、徴兵猶予に関する在学証明書を大至急送付すべし。調書証は、4月15日期限であるが岩手県の制裁で4月10日期限であり必らず紫波郡役所に提出すべきものである。もし期限を遅れると先入兵として徴兵される。操言ながら大至急校長の証明する在学書証を送付せよ。

  来る6月の夏期休業までの学費の金額について今より心痛している。いかにして送金したらよいものか。

  出来るかぎり苦学生として節倹せよ。

  この間大巻の屋号金矢の佐藤富哉というものが盛岡の県立農学校獣医科入学のところ今回で2回落第し落胆のあまり上京した様子である。あるいは長一を尋ね、または屋号柏屋の橋本花子さんを頼みに上京したようである。東京に入学することは父母も承諾し何分地方に面目ないと考えたことのようである。懇切に世話し、兄弟のように恩義を与えれば、父治郎はこれまでHに味方して、万事に私とは反対の意志にある者であるが、私に敵意を表するのは、実際において不利である。人の反間に乗ったことを目下ほぼ語っている様子であるので、来る5月5日頃の村長選挙にも利することがあるだろう。よくよく注意するようにせよ。

  今回送金したのは、昨今種々の支出に用し、第一農銀の払込金21円、地粗第5期16円、先だってよりの50円請求、都合92円外、平六酒造店からの四百円借金に対し、昨年2月以来の利子未払のための第五期上納金を、平6分切符計りにて差し向かえられども、金50円は昨年3月盛岡市肴町の野村豊治(井豊商店)から150円借用したものは、今や野村豊治も不如意の状態となり、突然督促され、これらは差し置き前92円に対し、作山金太郎から30円借り受け、その金を先だって送金した。上納金に中村謙三から10円借り受け、残金困難しているところ、昨日の朝佐比内村の屋号中野(長一の母の実家)の叔父様が50円持ってきて助けてくださった。直ちに農銀の払込金と20円を長一に送金することができた。これまた直ちに長一から礼状を直接に送付するようしてほしい。

  外学校の目下の状況及びその他の事柄を詳細に調べ至急報でしらせよ。右用事まで、早々」という内容。

  借金と支払い、長一への送金等のやり繰りについて書いているが複雑でよく分からないほどである。

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