2009年 9月 17日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉63 望月善次 たいまつの円弧の森林

 たいまつの円弧の森林 秋立てば 夜
  の大鳥 なきてすぎたり
 
  〔現代語訳〕松明をグルグルと円く弧のように廻した場所でもあった森林を、秋となったので、大きな鳥がこの夜と鳴いて過ぎて行ったのです。

  〔評釈〕「秋風節理」(署名 陸奥のおのこ)四首〔『アザリア』第三輯(盛岡高農アザリア会、大正六年十月十七日)〕の四首目。表現上からは、たくさんの松明が林全体を覆って「円弧」をなしている光景(話者の実体験ではなく、イメージ的世界の産物でも良い)を描くことが可能であるし、そうした場合のスケールの大きな作品としての魅力も確かにある。が、ここでは、一応、話者の実体験だとする〔現代語訳〕をつけておいた。後年の賢治の書簡「私共は一緒に明るい街を歩くには適しません。あなたも思ひ出された様に裾野の柏原の星あかり、銀河の砂礫にはなつひかりのなかに居て火の消えたたいまつ、夢の赤児の掌、夜の幻の華の様なたいまつを見詰めてゐるのにはいゝのですが。」〔宮澤賢治保阪嘉内宛書簡(書簡番号153、大正八年八月上旬推定)〕などを念頭に置いたからである。しかし、作品解釈としてどちらが適切かは、ヒフティ・ヒフティであることを繰り返しておきたい。
(盛岡大学学長)


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