2009年 9月 24日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉66 望月善次 実習服に汝がかむざし

 実習服に汝がかむざしの忘られて悲し
  からずや 二日そのまゝ
 
  〔現代語訳〕実習服にお前の簪は忘れられたままで悲しくないでしょうか。二日間も、そのまゝで。

  〔評釈〕「空谷の跫音(〜かむざし〜」(署名 △△△生)六首〔『アザリア』第三輯(盛岡高農アザリア会、大正六年十月十七日)〕の三首目。実習服が、嘉内在籍当時の盛岡高等農林学校において、どのように使用されていたかについては、評者は具体的な知識を持ち合わせていないが、一首飛んだ五首目には「ぽけっとの暗がりにかむざしはあり 実習服かもつられてあるらむ」(傍線部望月)とあるから、実習服は実習の際のみに使用され、その保管場所は、実習以外に通常学生たちが出入りする場所ではなかったと推察される。評者としては、女性からもらった簪を感激のまま、実習の際にも秘かに携帯した話者が、その実習服の中に大切な簪を忘れて来てしまったという状況を想像した。通常の文章であれば「二日そのまゝ忘られて悲しからずや」の語順となるところを「二日そのまゝ」を結句に取り出し(一字の空白も置いた)て見せた結果、「短歌作品」らしい様相を呈したのである。
  (盛岡大学学長)


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