2009年 9月 26日 (土)

       

■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉114 火石山(ひいしやま、1033メートル)

     
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  「火石山」は川井村の門馬にある。地図を見れば、東北電力の鉄塔が東西に設置されているので、この巡視路を利用することによってピークに近づくはずである。早池峰山の北9`bの距離に位置する火石山は、早池峰北面のアイオン沢を眺められることから、いつか登ろうと思っていた。

  「火石山」といえば、ズバリ!火打石が連想される。火打石とは発火具の一つで、時代劇で背中越しにカチカチッと打つ、あの黄土色のメノウ石のことだ。命がけの出陣でおなじみの切り火のシーンだが、江戸の時代には欠かせない着火用具であった。

  火打石で火打金を削りとり、火花を飛ばして火口(ぼくち)に着火させ、付け木で発火させる。山でよくみるオヤマボクチは「雄山火口」と書くことから、枯れた穂や葉をもんで火種に使ったことに由来するのではないか。滝沢村の燧堀山(かどほりやま)で採ったメノウは実際に売買されたらしいが、マッチの普及とともに火打石方式はすたれていく。

  火打石、火打金、火口、付け木をセットにまとめた火打袋。旅から旅へ渡った、かの木枯し紋次郎も腰に提げて歩いたと思われる。登山におけるライターやマッチは必携品だ。イザというとき「旅する火おこしグッズ」は命を救う。
 
  国道106号をJR山田線の松草駅から2`b東進し、岩井橋の直前で左折。東北電力の黄色板「宮古線110/111」からすぐ左の岩井沢林道に入る。沢沿いに800b進み、岩井沢林道と火石山林道の合流点に車を止める。この辺りはクマの出没地帯らしく、標柱が大きくかじられていた。

  火石林道を15分、カーブミラーを数えながら歩く。「三番目のミラー」「高圧線直下」「ロープ」これが取りつく崖の目印である。急斜面を4〜5b上がると、樹林の中に快適な山路があらわれる。

  最初の鉄塔「宮古線2号112」から113、114、115と順調に高度をかせぎ、花道のような幅広い芝生ルートを東進。鉄塔116にたどり着いて初めて、兜明神と岩神山が望まれた。

  鉄塔117は標高1000bで、目指す山頂はここで北へ替わる。117の10b手前で左の雑木林へ進入し、古い踏み跡をたよりに300b行く。尾根に出たらそのまま直進せず右へ折れる。20bで山頂だ。よしんば電波増幅アンテナへ行ってしまっても、戻りがてら尾根の二等三角点を探そう。2時間でタッチできる。

  鉄塔117へ戻った私は路傍の石を拾い、早池峰に表敬の切り火を打った。

(版画家、盛岡市在住)

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